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博愛主義の源

今回のアメリカ出張での楽しみは何と言っても、ライフライン代表理事で創設者のダンに会うことだった。ライフラインは2003年に設立され、現在、ハイチ、ウガンダ、ケニアで年間約1億円の予算で七厘や井戸の事業を実地しているが、なんと、予算のほとんどは、弁護士のダンの個人的寄付で賄われている。

私は、年間1億円もの額を人道支援に注ぎ込むダンの「博愛精神」の源は何なのか知りたかった。ダンは50歳前後で、リュックサックを担ぎ、軽自動車を運転し、とても大富豪とは思えない庶民的な人だ。住んでいる所も、一般のアパートだ。

私は会議が終わった後の飲み会でダンに切り出し、ダンはいつもの笑顔で対応してくれた。

私:日本では、年間1億円もの額を寄付するなんてあまり聞かないのだけど、ダンの博愛精神はどこからくるの?

ダ:昔から平等や人権への強い想いがあったね。

私:それは、何か、自分の過去の体験がそういう想いを強くさせたのですか?

ダ:今まで、そんなこと聞かれた事なかったな。うーん。何か、特定な経験があるわけじゃないのだけど、とにかく、昔から不公平な事に我慢ができない人間だった。私は、自分が稼いでいるお金で贅沢をするくらいなら、様々な社会的構造で不公平にも貧しい生活を強いられている人を救いたいと思う。「貧困」の反対語は「裕福」というのが通常だけど、私は、「貧困」の反対語は「公平」だと思っている。ヘブライ語で「思いやり」という単語は、とてもよく使われるんだ。

私:ダンはユダヤ人なのですか?

ダ:敬虔ではないけどね。父親は、ホロコーストでチェコスロバキアから逃れてきた難民だった。1939年、ヒットラーが侵攻してきた5日後に国外へ逃亡した。父親は5歳だったのだけど、とても幸運だったとしか言いようがないよ。ニューヨークに住み、勉学に励み、神経学専門の大学教授になった。父は、いつも、私に「不公平な社会システムに虐げられている人の境遇に想いを馳せることは忘れるな」と言っていた。結局、世界はホロコーストから何も学んでいない。カンボジアやルワンダの大虐殺が示している様にね。だから、少しでも経済的余裕のある人が、戦わなければならないよ。

私は、連日の会議で眠くなっていたが、ダンの話で、一気に目が覚めた。ダンは、「日本はとても横のつながりが深い社会だと思っていたから、寄付をすることが珍しいとは驚いた」と言う。人道支援の現場で活動する日本の団体の運営資金の大部分は政府、国連、または宗教団体から出る。企業や個人からの寄付はとても少ない。私は、ずっと、なぜ日本はそうなのか考えてきたが、ダンからわずかながらヒントを得ることができた。

アメリカは、ダンの父親の例が示す様に、歴史的に迫害の対象になった人たちを受け入れ、今でも年間万単位でアジアやアフリカから難民を受け入れている。一方、日本は「難民鎖国」と呼ばれるほど、難民認定数が年間数十人と少ない。それにより、「助けてもらったのだから、次は、自分が助ける番」という博愛精神の土壌がアメリカの方ができやすかったのではないか。

東日本大震災の被災地で、在日ビルマ(ミャンマー)難民がボランティアをしていたことを思い出した。政府がいくら、国連への拠出金を出そうが、 実際に不公平な社会構造に虐げられた人たちと社会の中で直接関わろうとしなければ、「博愛精神」は根付かないのかもしれない。

これまでダダーブでは、メールの返信が遅いなど、色々本部に対する不満もあったが、ダンの心意気に触れ 、そんな不満を抱いていた自分がとてもちっぽけに感じた。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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