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主夫力とは

1年2ヶ月振りの「組織」での勤務。「ブランクは感じますか?」と良く聞かれるけど、全く感じない。それどころか、主夫をやったおかげで、これまでの職場よりも、同僚との人間関係がスムーズにいっているような気さえする。「主夫歴」と「同僚との人間関係構築」にどんな関係があるのか?

主夫をやる前の私は周りの人間関係よりも、自分の成果にこだわる傾向が強かった。学校では兄や姉に負けない成績を取りたかったし、毎日新聞では特ダネを書きたかったし、ケニアの難民キャンプでは形に残る成果を示したかった。同僚との人間関係も気にしなかったわけではないけど、「成果を残しさえすれば、誰も文句は言わないだろう」的な考えがあった。実際、特ダネを書けば上司は「よくやったな」と肩をもんでくれるし、署名記事だから、全国津々浦々の同僚たちも目にする。

「主夫」と「会社員」の大きな違いの一つとして、後者は、個人の成果が、人間関係を大きく作用するのに対して、前者は、人間関係がうまくいかなければ、どんな「成果」も水の泡になってしまうことだ。私がスージンと喧嘩ばかりして、信頼を失えば、どんなに美味しい料理を作った所で、感謝はされない。だから、私の成果を認めてもらうために、まず、スージンの気分を害さない方法を模索する。言い合いになったら、「スーーージーーーンーー、ごめんねーーー」と赤ちゃん声をあげて謝る。そうすると大抵の場合、平和的解決となり、美味しくご飯を食べてもらえる。

数年前に大ヒットした「家政婦のミタ」というドラマ。料理、洗濯、掃除、何でもパーフェクトにできる家政婦なのだが、最初、家族と馴染めないという理由で、解雇されそうになった。新聞社で、特ダネを書きまくる記者が、同僚と少し馴染めないという理由で解雇されるなんてあり得ない。人間関係なくして成果はあげられないのは、どの仕事もそうなのだろうが、主夫業ほど、その度合いが強い仕事はあまりないかもしれない。

今の新しい職場になってからは、これまでしたことなかった、メールに絵文字をつけたり、毎朝、笑顔で皆に挨拶したり、金曜日に退社する時は、同じ部屋の同僚1人1人の机に行って「週末は何するの?」などと話したり。会議では、自分の言いたいことよりも、まず、周りの気分をどうすれば和ませるか考えて、「どうですか、お水でも飲みますか?これは私のおごりですよ」と冗談を言ったり、「○○の言う通りだと思います!」などと同僚の意見を支持したり、「○○のおかげで、この業務をうまくこなせました」と、同僚に感謝したり。毎日新聞時代の「会議」なんで、自分の成果を披露する場としか思っていなかった私としては、相当なチェンジである。

私が所属する「課」は約20人で、欧米諸国は勿論、エチオピア、コロンビア、トリニダードトバコ(カリブ海の島国)など、超多国籍。そんな多文化な職場で、2ヶ月の間、楽しく仕事できているのは、「主夫」の経験が大きいような気がする。

いい加減「ブランク」なんていう言い方は辞め、日本の企業も思い切って「主夫研修」と称して、数ヶ月、社員に「主夫」をやらせてみてはどうだろう?案外、企業業績があがったりするかも(笑)。
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主婦/夫の存在はやっぱり大事だ


そういうわけで、夫婦揃って国連職員になった。

私は、1年2ヶ月の「ブランク」を経て、3月4日からジュネーブで仕事を始めた。 (私は決してブランクだとは思ってないけど!)

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(私の新しい職場)

スージンはまだアゼルバイジャンで仕事を続けており、これまた、1年2ヶ月振りの夫婦別居生活。5月末で、スージンは今の仕事を中断し、「特別休暇」を取り、ジュネーブへ引っ越してくる予定だ。この特別休暇は、病気だけでなく、介護や育児、配偶者の転勤に寄り添う場合など、上司が「妥当」と判子を押しさえすれば、最長2年まで取ることができる。そして、配偶者が国連職員の場合、期間は無期限。

そういうわけで、お互い国連職員の地位を維持したまま、来月末から、ジュネーブで再び夫婦生活を再開できることになった。スージンは、とりあえず、ジュネーブで「主婦」となり、仕事をするか、勉強するか、少し休むか、考えるらしい。

単身で新しい国にやってくると「主婦/夫」の偉大さを痛感する。仕事は大抵9時—6時で終わるのだが、それから買い物、ジョギング、料理、皿洗い、妻との電話、お風呂とかしていると、あっという間に夜10時近くなる。アゼルの時みたいに家政婦さんなんか雇えないから、週に2回は洗濯、週に1回は掃除。週末は家具などの買い物。新しい住居探しも、平日昼間にしかできないことが多く、仕事を抜け出さなければならない。家が決まったら、平日昼間にしか開いていない不動産に行って手続き。新しい家が決まれば、インターネットなどの契約。家具の購入。無線LAN接続に問題があれば、また、仕事帰りに、契約会社に立ち寄る。それでも接続されなければ、また立ち寄る。

view from the house
(新しいアパートからはレマン湖が見える)

アゼルに夫婦で移り住んだ時は、これらぜーーーんぶ、「主夫」の私がやっていたのかと思うと、とても誇らしい。というか、スージンが羨ましい。

4月19日には韓国語能力試験もあって、その勉強さえ、手につかない。ブログ執筆なんて夢のまた夢、、、だった。今は、試験も終わって、新しい家にインターネットが接続され、やっと、落ち着き始めた。

と、思っていたら、一週間前から、突然、咳が出始める。口の中が少し熱くなり、咳が出過ぎて、喉に痛みが。しかも、咳は、夜、寝る直前、ベッドの中で一番激しくなり、1−2時間、眠れないことも。花粉症やアレルギーなんて今までなかったのに、なぜだ?家にあった花を捨て、家全体を雑巾がけしても、いっこうに治らない。てっきり、新しいアパートに問題があると思っていたが、韓国語試験を受験するために訪れたフランスのストラスブルグのホテルに泊まった時も、就寝前に咳に襲われ、アパートとは関係のないことが判明。

医師の兄と電話で話したら、「単なる風邪だろ。咳って体を横にすると出やすくなるんだよ」と言われ、納得。

風邪?アゼルでの1年2ヶ月、一度たりとも、体を壊さなかった私が風邪?ケニアの難民キャンプで働いていた時、数ヶ月おきに体調を崩していた時に逆戻りか、、、。

実は、この文章を打っている今も、2分おきに咳をしている始末。

異国の地で勤務って、精神的にも肉体的にも結構くるんだろうな。それを横で支えてくれる「主婦/夫」がいるかいないかは、大きな違いだ。海外で家族で駐在されている皆さん、一緒に寄り添って来てくれている方に感謝の気持ちを忘れずに!

そして、アゼルでは、妻が働き、私が主夫をし、今度はジュネーブで立場が逆になり、私たち夫婦はどうなっていくのか、乞うご期待!
プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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