徒歩一分の距離に住んでいるのに、お茶をしない親子

9月は3週間休みをもらい、日本やカンボジアで過ごした。

9月21日に東京着。野球観戦や友人の結婚式など、東京で数日過ごし、9月25日、新潟の実家に着いた。社会福祉法人の理事長をしている母は相変わらず忙しそうで、27日まで熊本に視察。25ー26日の夕ご飯は私が用意し、父親と食べた。

27日、母が戻り、「今日はヨーコーの歓迎会だからね!おはぎにするわ!」と言う。20個以上のあんこやクルミのおはぎがテーブルに並んだ。私が「夕ご飯、おはぎだけ?何か、タンパク質は?」と尋ねると、「家は、いつも、おはぎを食べる時は、おはぎだけなのよ!」と、いつもの甲高い声が来る。「そうだったっけ、、?」という疑問は胸の中に閉まった。

私がタンパク質を食べたいというのを察知した母は、近くの姉の家に電話。5分後、「持ってきたよー!」と玄関から5歳の姪が、前の晩の残りのサケの味噌漬けを持ってきた。

次の日、母は「今日は国際大学で昼食会があるから一緒に行かない?」と誘ってきた。国際大学とは、実家近くにある大学院大学で、授業はすべて英語でやり、学生の大半は外国出身。地域の人との交流イベントだという。私は「いや、いいや」と言い、近くのラーメン屋に行くことにした。

2日後、スージンが妹のヘジンを連れて、新潟に来た。スージンは、韓国でヘジンと3週間ほど過ごした。新潟市の水族館にヘジンを連れて行くことになり、母も一緒に来てくれた。新潟市までは車で1時間半。車中では、母が初めて対面するヘジンにスージンの通訳を介して色々質問をした。

 私も母も水族館は見たことがあったから、スージンとヘジンだけ水族館で下し、母に「お茶でもしよう」と言った。母は「そうね」と言い、車を走らせた。

5分、10分経っても、なかなか喫茶店が見つからない。そしたら、母は携帯電話を取り出した。「あら、Nさん!今近くに来ているのよ。ちょっと、立ち寄っていいかしら?」と話し始めた。

 電話中の母に、私は伝えた。「俺はそこには行きたくないのだけど」。そしたら母は、驚いた顔で、「あ!何か、息子があまり乗り気じゃないみたいなので、また、後日にさせてもらいますね」とストレートに伝えた。

母は「この辺に、けやき園っていう喫茶店があると思うのだけど」と言う。
そしたら、何と、「けやき園」という看板がすぐ出てきた。「あ、あったよ」と車を駐車場に入れた。

そして、「けやき園」に入ったら、私が予想していた通り、「あら、Tさん!久しぶりね!」と母が、そこのオーナーらしき女性に話しかけた。Tさんも「あら!ちづこさん。久しぶり!」と言い、私たちの席に座り、近況について語り合い始めた。Tさんは、私も面識のある方で、10年ほど前にお世話になったことがあったため、その時の思い出話などをした。

40分ほどし、母が「そろそろ行こうか」と言い、店を出た。スージンからまだ電話がないため、私は、海岸沿いの駐車場に車をとめ、日本海を眺めながら、母に切り出した。

私:お母さんと私が会えるのって、年に一度か二度だよね。去年も話したけど、お母さんって、いつも、自分が作った予定表に、私を組み込ませようとするよね?私がどうしたいのかという部分はあまり考慮しないというか。今だって、Nさんの所に立ち寄りたいかどうか、なんで、私に最初に聞いてくれなかったの?
母:だって、Nさんはヨーコーもよく知っているし、久しぶりに会いたいでしょ?

私:会いたいけどさ、電話する前に聞いてほしいよね。こうやって、お母さんと一対一で話せることって、実家に帰ってきてもあまりないんだよね。いつも忙しそうにしているから。けやき園だって、お母さんの友人がやっている所だったから、結局、2人で話すことができなかったし。私の歓迎会だって、普通なら「ヨーコー何が食べたい?」って聞いてくれてもよさそうなのに、「今日はおはぎ」って最初から決まっていたし。

母:何が食べたかったの?

私:焼き肉、刺身、蕎麦、シャブシャブ、寿司、いろいろ。

母:焼き肉だったら、国際大学の交流会に来てくれてたら、食べられたのよ。

私:そういう問題じゃないでしょ。問題は、お母さんが私に「ヨーコーは今日何したいの?温泉に行きたいの?じゃあ、一緒に行こうかしら」みたいな対話形式を持ちかけてこないということなんだよ。お母さんの中には、大事な大事な予定表があって、私たちはそれに突入る隙がない感じがする。みいちゃん(二姉)がこちらに移り住んでから、もう5年になるけど、みいちゃんとは一緒に時間過ごせている?

(ずっと東京で働いていた二姉は、現在、実家から徒歩1分の所に夫と3人の子どもと住んでいる)

母:そうねー。私が孫たちを世話する時は、みはえは仕事している時だからね。一緒にご飯食べるとしても子どもたちがいるから、なかなか話し込むっていうことはないな。

私:2人きりでお茶したの、最後いつ?

母:え?そんなの記憶にないな、、。

私:この5年間、すぐ近くに住んでいる娘と、一度も2人でお茶したことないの?

母:だって、みはえ忙しそうにしているから、そんな時間あるなんて思わないでしょ。

私:それは、みいちゃんだってそう思っているかもしれないし、誘ってみなければわからないでしょ。誘ったことあるの?

母:ない。誘うなんて簡単なことよ。私なんて、今は、時間作ろうと思えばいくらでも作れるのだから。ただ、向こうが忙しいと思うから。

私:2−3ヶ月に一回くらいはお茶でもするようにしなよ。30分でも1時間でもさ。お母さんはもう75歳。バリバリ働いて体壊すよりも、私たちと少しでも時間を取って、時間の流れに少しブレーキかけた方がいいんじゃない。

母:わかった、今度誘ってみることにする。

そんなことを話しているうち、母は「私みたいな出来損ないの親のもとで、みんな7人とも立派に育ってくれて、感謝しているよ」という、いつもの自虐モードに入っていってしまった。

それにしても、徒歩一分の距離に住んでいるのに、2人きりで過ごすということが一度もないとは、、、。物々交換はもちろん、孫のお世話、冬の雪かきなどなど、「事務的」な往来は毎日のようにあるのに。「お茶でもしない?」という一言って、実はけっこう難しいのかもしれない。近くに住んでいるとなおさらか。

そんなことを考えると、私が母に対し、とても受け身になっていたことに気付く。「お母さん、今日は、これまでお世話になった感謝の記に、お母さんの食べたいもの作るから、楽しみにしてて」と私から声をかけてやれば良かった。来年はそうしよう。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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