非日常の中にある日常

昨年10月、著書第一弾「国境に宿る魂」(世織書房)が出版された。普通なら両手をあげて喜ぶはずなのだが、なかなか、それができない。本は私が24歳のときにタイやビルマでの体験を綴ったものなのだが、改めて読み返そうとしても、1ページくらいで顔が赤くなってしまう。「同種偏愛主義」だの「民族主義」だの、文章が硬い。偉そうに世界をすべて知り尽くしたように、物事を決めつけている。うーーん。こんなの2500円払って、買ってくれる人、いないだろうなああ。

 と、思いながらも、ケニアに40冊ほど持ってきて、日本人に会うたびに売りつけている。自分の家に食事に招待して、話が盛り上がったときに「いやあ、最近、本を出しましてねえ」と切り出して、現物を持ち出すと、場がしーーんと静まりかえる(汗)。タイとビルマの難民に興味ないし、本代高いし、でも、食事に招待してもらっているから、断るのも、、、、というのが、本音だろうな。ほとんど、悪徳商法に近いやり方だが、それでも8割方、「ちょっと、今日、お金持ち合わせてないので」などと言って、うまく切り抜けていく(涙)。

 世界で一番大きい難民キャンプで働く唯一の日本人(2011年6月現在)として、現場のリポートを日本の人に届けたいという思いがある。でも、アフリカとか難民とか、なかなか身近に感じられないことについて、共感が得られるように書くのって、難しい。

 先日、日本に一時帰国した時、出版の仕事をしている友人とお茶しながら、私の本についてアドバイスを頂いた。

友「この本は完ぺきにしようとしすぎている。学術論文ならわかるけど、体験ルポで完ぺきなものは求められていない。そもそも、なんで、難民に興味を持ったの?」

私「高校1年でアメリカ留学して、言語の壁とかぶつかって、大変だった。それで20歳で旧ユーゴで難民に初めて出会って、異国の地で苦労している人たちを見て、昔の自分と重なった。私は自分で選んで異国に行ったけど、異国に行かざるをえなかった彼らからしたら、まだ自分は恵まれていると思った」

友「それも、完ぺきすぎるなあ。そんな、完ぺきな10代だったの??もっと、馬鹿なことしてたんじゃないの?」

私「うん、してたよ。中学の時は、新聞配達して稼いだお金で、新幹線(子供料金)に乗って競馬場に行っていた。関東のいとこの家に行った時は、帰りの電車賃がなくなるまで競艇につぎこんで、泣きながらいとこの家に金を借りに行った。アメリカの大学時代は、カジノ船のゴールドメンバーだった。でも、それも難民に出会って、すべてやめられたんだ」

友「ああ。そういう方が、共感しやすいかもね。元ギャンブル少年が、難民キャンプで支援しているって、おもしろそう」

なるほど。何となく、腑に落ちるものがあった。確かに売れてる小説の主人公って、恋人や友達がいなかったり、仕事で失敗が多かったり、家族関係がこじれていたり、何かしらのコンプレックスを抱えている。でも、そういったコンプレックスがあるからこそ、人は共感するのかもしれない。

 中学時代に賭博にはまったのも、兄姉より成績が良くないとか、周りの同級生には彼女がいるのに、自分だけいないとか、今考えれば、くっだらない理由だったけ。兄姉に追いつくために、一生懸命背伸びしようとばかりしていたから、硬い文章にしかならなかった。

 紛争、飢餓、旱魃、テロ、疫病、この世のすべての病理を抱え込んでしまったかのような国、ソマリア。そこから逃れてきた人たちが住む、ケニアのダダーブ。私が国連での任務を終えた今年3月は32万人だった難民キャンプの人口が、今年6月に戻ってきたら35万人に増えていた。

私はこのキャンプで、これから1年、アメリカに本部を置くNGO「International Lifeline Fund」の職員として、19~50歳の男女30人が働くコンロ製造工場の「工場長」として30人を監督する。コンロといってもガスとか電気コンロではない。キャンプの人たちは、その辺で集めた木々を燃やして料理をするのだが、私たちが作る粘土製の円形コンロの中で木々を燃やすことで、普通に焚火した時の7割の量の木々で料理することができるようになる。乾燥地帯で細い枝の低木が砂漠上に数メートル置きに連なるダダーブで、材木は貴重な資源。外からやってきた難民が木々を伐採することで、ケニアの人々と対立することにもなりかねない。

「難しい民」と書いて「難民」だから、栄養失調している子供や片足がない元兵士などのイメージが浮かぶかもしれない。確かにそういう人たちもたくさんいる。一方で、数ヶ国語を使いこなして、車を乗り回し、レストラン、ホテル、インターネットカフェ、両替商を経営するお金持ちの難民だっている。サッカー、バレーボール、ビリヤード、映画鑑賞をして日常を過ごす若者など、非日常の中にも日常的な風景はある。サッカーワールドカップの際にはアフリカ諸国の応援に盛り上がり、日本に津波が襲ってきた時には、たくさんのメッセージがキャンプから私の携帯に届いた。

それにしても、コンロ工場で働く30人の難民も、私みたいな「工場長」に雇われることになるとは思わなかっただろう。2人のエチオピア人以外は、みんな敬虔なイスラム教徒。女性はヒジャブという布で頭を覆っているし、みんな1日5回のお祈りは絶対欠かさない。飲酒や賭博なんて、もっての他だ。私が二十歳の時にカジノ船のゴールドメンバーだったなんて知ったら、即ストライキになるだろうな(汗)。

そんなかけ離れた人生を歩んできた私と彼らの間で繰り広げられる「非日常の中の日常」を綴りたい。

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No title

まずは、ブログ復活おめでとう~!
YOKOくんにギャンブルって結びつかないけど、いろいろあるよねぇ。私も昔は(今も?)うんと生意気だったからなぁ。知らないってすごい。‥と年を重ねるごとに思います。それにしても、ちゃんとケニアでも本の営業してるのがYOKOくんらしい(笑)
レポート楽しみにしてるよ(^^/)

オープンに

それこそすべてオープンに話して
どうゆう反応をされ
どうゆう対応をしたか
そして最終的にどうなったか
綴ればいいじゃん!?

想像するだけでワクワクするわ(^_^.)

すでにニヤケがとまらないよ!!

楽しみだ

ちなみに俺はカジノディーラーずっとやってたさ

昔からうちらは好きだったもんね(笑

Re: オープンに

みつたけくん

アドバイスありがとう!そうだね。ありのままに、素直に書くように頑張ります。
これからも声援よろしく!

ケニアに来たら、一緒にカジノ行こう。

Re: No title

AICOCOちゃん

そう、結びつかない??それだけ、自分が変わったってことなんだな。これからもよろしくねー。

No title

相変わらず楽しそうなことしてんねー笑
中学の時の事思い出したよ笑
いろいろやったね~

ブログ見てから俺ももっと真剣に遊ばなきゃって思ったよ感謝!!

Re: No title

ご無沙汰ーーー。また、日本に戻った時は、是非、遊びましょうーー。大和村にも、何か、ルーレットとかあったらいいのにな(笑)。
プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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