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夫の結婚式

 いつもの様に工場を訪れると、話好きのハナム(仮名)が「今日は頭痛がする」と言う。いつもは、少し出ている前歯をむき出しに、ソマリア語で色々話しかけてくるのだが、今日はどうしたのだろう。
 「何かあったの?」と尋ねると、

「今日は夫の結婚式なの」

という。つまり、夫が2人目の妻と、今日、結婚するのだという。とても興味深い話で、私は仕事を忘れて、彼女のそばにすり寄り、色々質問をした。

私が「1人目の妻として式に出席しなくていいの?」と冗談交じりに尋ねると、下を向きながら首を振る。他の従業員は爆笑。

 「私は嫉妬深いから、辛い」という。そりゃ、私だって、自分の妻が2人目の夫と結婚するとしたら、自殺したい気分になるだろう。

 ただ、一夫多妻が社会的に認められている中で、ハナムの様に、公然と一夫多妻を嫌がる女性がいるということに少し驚いた。

「私は5人の子供がいますが、今の夫との間にできた子供ではないのです」と言う。ソマリアの首都・モデガデシオで2005年に結婚した1人目の夫は、難民キャンプに来て、例の中毒性のあるコカインの様な葉っぱ、カートにはまってしまい、暴力を振るうようになり、2010年に離婚。そして、今年1月に2人目の夫と「私以外の人と結婚しないこと」を条件に結婚したという。そしたら、たったの7か月で約束は破られてしまった。

 「私は何度も何度も、結婚に反対したのです。でも、夫は、私を無視して結婚してしまいました。どうすればいいでしょうか?」とハナムはうつむく。

 私は「日本に行けば、一夫多妻はないけどね」と言うと、「私みたいな出っ歯でも、相手見つかりますかね」と冗談で返してきた。

 夫は33歳で、イスラム教の聖典・コーランを学ぶ学校、マドラサの教師をしている。ハナムは29歳で、夫の2人目の妻は18歳。ハナムは2人目の妻と会ったことはないという。

 私は、「なんで、一夫多妻は社会的に認められているのに、それを嫌がるの?」と尋ねてみると、「人間は2人を同時に愛することなんてできないと思う」と言う。でも、そしたら、宗教の教えに反していることにはならないのか?いや、お酒を飲むイスラム教徒がいるように、宗教に対する解釈なんて、人それぞれか。

 1人目の夫はカート中毒になり、2人目の夫は、2人目の妻と結婚した。いずれも、ハナムが猛反対したにもかかわらず、全く受け入れてもらえなかったという。「男を見る目がないよね。1人目の夫とも離婚できたのだから、2人目の夫とも離婚したら?」と言うと、「そうですね。5人の子供は彼とは血縁関係はないし。でも、もう、彼との新しい命を身ごもってしまっているのです」という。

 自分が妊娠中に、夫が2人目の妻と結婚か、、、。想像しただけでも、吐きたくなるな。私は、「じゃあ、いっそのこと、中絶したら?」と言ったら、再び工場が笑いの渦に。

 私は、「今日の彼の結婚式に、私が来賓として出席して、『新郎に質問です。あなたは、1人目の妻と結婚する際、他の女性と結婚しないことを約束したはずですが、その約束はどうなったのでしょうか?』と祝辞を述べてもいいかな?」と言ったら、ハナムは白い出っ歯をむき出しに笑った。

 ずっと愚痴っていたハナムだが、コンロを作る手を止めることは決してなかった。彼女の真面目さには脱帽。それにしても、ハナムの家族生活、これからどうなっていくのだろう。仕事に影響しなければいいけど。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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