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ラホが去った後

ラホが去った後の工場は、まるで別世界だ。4月中旬の全体ミーティングで、新体制を発表。新しい主任には、公募で選ばれたブラレ(28歳男性、仮名)。副主任は、キモとドウボウ(23歳男性、仮名)の2人体制にした。

そしたら、ラホの妹であるミンシャが「なぜ、これまで1人だった副主任を2人にするのですか?私たちへの監視体制を強化するためですか?」と尋ねてきた。ラホの甥であるダヒールも「工場長は、またスパイを置いて、私たちに対する監視を強化させようとしている」と同じ様は質問をした。

私は、「『スパイ』とか『監視体制』とか、なぜ、あなたたちが心配するのか理解できない。あなたたちが契約書通りに仕事に励んでくれれば、それでいいのです。それについてあなたたちが心配するということに、私は逆に心配します。それは、あなたたちが、私に対して何か後ろめたいことがあるからじゃないでしょうか?皆さんが、自分たちの勤務態度に自信を持てるなら、監視されるということを心配する必要はないはずです」

ラホの親戚である2人が、なぜ、この様な質問をしたかは理解できなくもない。ラホが工場を去る決断をしたきっかけになったのは、工場内の2人の従業員が「ラホは遅刻して出勤しても、自分の出席簿には遅刻マークを付けていない」と私に密告したことだった。だから、2人は、未だにその「密告者」が許せないし、ラホを追求した私に対しての怒りもまだ消えていないのだろう。

私は続けた。「副主任を2人にするのは、二つ理由があります。まず、キモがエチオピア出身で、主任不在の場合、彼1人では皆さんとの会話が難しいこと。そして、ドウボウがこの1年、リーダーシップを発揮して工場を支えてくれたことを評価し、昇進させたかったこと。それだけです」

そしたら、他の従業員たちが、ラホがいた頃には、あり得なかった行動に出た。滅多にミーティングで発言しないサラット(21歳男性、仮名)が「副主任が2人いた方が、組織として機能しやすくなると思う」と発言した。次に、同じく普段は静かなイブラヒム(28歳男性、仮名)が「私もそう思います。1人より2人の方が、従業員と主任との意思伝達がスムーズになる」と言う。

従業員同士で異なる意見が交わされるのを、私は初めて見た。これが本来あるべき姿で、様々な意見が従業員から出され、それが工場運営方針に反映されていくことで、彼らの自立心は芽生えていく。

私が工場長就任当初、ラホに注意文書を手渡し、私が工場を去った後、ラホは従業員を集めて、「もし、工場長が再び私に何か罰則を与えるようなことがあったら、全員でストライキをする。皆、私のおかげでこの工場に入ったことを忘れないで」と話していたことを、思い出した。

56歳のエボ(男性、仮名)が、ミンシャやダヒールに「副主任2人の方がいい。ドウボウはこの1年、本当によく頑張って仕事をしていた。彼は副主任に適任だ」と言い聞かせていた。工場長就任して1年。やっと、スタートラインに立った気分だ。
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No title

おお~~~~。従業員の中にも、ちゃんと正論を理解する若者が現れてきた、ということですね。発言までしてくれて。
今まで、見て見ぬふりをしていたんでしょうね、反対意見に逆らうと、とばっちりがくる、とか、考えて。
でも、本当、良かった~~~~。
組織運営として、雇用があって、仕事に従事、会社命令には従う必要があることを、少しでもわかってくれる人が現れると、嬉しいですね。
そういう人たちは、きっともっと大きな社会に出た時、今の体験が大きく役立つはず!!!
プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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