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業務命令に従えない従業員

以前にも書いたが、従業員たちは「業務命令」という感覚がとても希薄だ。学校にも行った事がなければ、会社で働いた事もないから、規約に縛られた「集団行動」をした経験が絶対的に不足している。

工場Bは、これまで、工場Aから運ばれてきたレンガを組み合わせるだけが仕事だったが、この度、工場Bにもレンガを焼く窯が作られたため、従業員たちはレンガ作りもしなければいけなくなった。

しかし、レンガ作りというのは、牛の糞を混ぜ合わせるなど、臭くてきつい仕事だ。女性にはなかなかできる仕事ではないため、男性従業員にどうしてもしわ寄せがいく。

レンガ作りが始まり、何日か経ってモウリドが「レンガ作りの人手が足りません」と言う。私が「男性従業員の4人は何をしているの?」と尋ねると、「彼らはやりたくないようです」と返答した。

私は、メールでモウリドに迫った。「『従業員がやりたくないようです』というのは、業務命令に従わない理由にはなりません。私たちの仕事は契約書に書かれた通り、従業員が仕事をするかどうか監督することです」と伝えた。

2日後、モウリドは「いくら説明しても、ノア(男性、仮名)とユスフ(男性、仮名)の2人が従いません」と言う。

 2人は、レンガを組み合わせるだけでも大変なのに、さらにレンガ作りまでやらされるのは辛い。工場Aから何人かこちらへ移動させるべきだと主張しているという。

私は「契約書に書かれた事を遂行できないなら、口頭注意処分。それでも、従わなければ、注意文書を出すしかありません」と伝えた。そして、次の日、彼らの態度は変わらなかったため、仕方なく、注意文書を手渡した。注意文書を渡されると、自動的に給料の8パーセントが引かれるシステムになっている。

モウリドは「注意文書は手渡しましたが、工場長と直接、話がしたいということです」と言う。治安悪化で工場に行く事が難しくなった私は、次の日、警察の護衛が付く国連の事務所の一室を借りて、2人に会った。

彼らは、「レンガ作りは女性ができないため、私たち男性だけでは人手が少なすぎる。ノルマを達成するのは難しい」などと言った上で、「給料を差し引かれるのは辛いから、注意文書を撤回してほしい」と陳情してきた。業務命令に歯向っておいて、よく、そんな事が言えたものだ。私は「契約書をもう一度、じっくり読んで、上司からの命令が、契約書に沿ったものなら、それに背くことは規則違反です。ノルマを達成できるかどうかは、やってみなければ分からないし、ノルマを達成できなかった場合の罰則規定はありません。残念ながら文書撤回はできません」と突っぱねた。

そして、給料日。全体ミーティングで、今回の事を話したら、従業員のタワネ(男性、仮名)が「レンガ作りの業務が始まった時、私たちは、工場Aから従業員が何人か派遣され、インターンと一緒に、レンガ作りを担当すると思っていました。だから、私たちがレンガ作りをさせられるとは思っていませんでした」と情状酌量を求めた。

私は「私たちと、あなたたちの工場運営に関して意見が異なることは多いに結構です。そして、その意見を述べること、質問をすることも、多いに結構です。問題は、意見が異なるからといって、私たちの指示に従わないということは、『ありえない』ということです。あなたたちが、レンガ作りは別の人間がやると思っていたということは仕方のない事です。ただ、それについて主任やモウリドと話し合い、それが思い違いだったと認識した時、なぜ、指示に従わないのでしょうか?40人の従業員が、それぞれの意見や哲学で動くのなら、組織は組織として成り立たなくなります。契約書に自分がサインしたのですから、皆さんには規約を守る責任があります」と伝えた。

そしたら、強ばった表情をしたノアが、「もし、レンガ作りをすることがわかっていたなら、契約書にサインはしませんでした」と言ってきた。

こういう無責任なコメントに関しては、私はとことん厳しく対応する主義だ。「別に、あなたがこの工場で働くことは義務でも何でもありません。契約を破棄しますか?」と尋ねると、ノアは黙って首を振った。

そしたら、今度は女性従業員たちが、「今回だけは、彼らの給料を差し引くのを見逃してやってくれませんか?」といつもの陳情をしてきた。「今回が最後です」というのは、昨年、何度も聞いてきたし、実際、一度見逃したことがある。ここは心を鬼にするしかない。

「以前、一度見逃してあげたから、今回はあきらめてください」と言うと、給料を差し引かれる張本人のタワネが「工場長は、確かに、一度見逃してくれた。その時、今回が最後だと約束した。だから、今回は差し引いていただいて構いません」と言うではないか!

最後にちょっと、感動させられたが、給料はしっかり差し引かせてもらった。これで、少しは「業務命令」というのがどういうものなのか、わかってくれればいいのだが。
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No title

素晴らしい、対応だと思います。

いや~~、本当に、子供の用に、ああでも、ない、こうでもないと、言い訳を見つけてくるものなのですね~~~。

お疲れ様です。

忍耐

育てるということは忍耐ですね。どれだけ辛抱強く説明し、説得し、理解させるか、子育てと同じように愛がなければできないかもね。
あなたはよく頑張っているよ。

No title

Aou さん、ありがとうございます。なにせ、親から何も教わらなかったから、何を教えるべきなのかわからなくて大変です(笑)
プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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