スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

武装した若者、工場訪れる (その3)

アヤレとモウリドによる交渉努力は何度も空振りに終わった。事件翌日は、相手側が「今日は忙しい」とキャンセル。翌々日にミーティングを設定したにも関わらず、 当日出向くと、「別の団体と協議中」とまたもやキャンセルされた。そして、6月11日に改めて出向くと、今度は「工場長と直接話さなければ意味がない」と相手側が取り合わなかった。工場長なしでも、交渉に臨むと当初は約束していたにもかかわらずだ。ナイフを振り回されたあげく、なぜ、こちらがここまで下手に出なくてはいけないのかわからず、私は苛立った。おそらく、現場で迷走しているモウリドとアヤレの苛立ちは、私以上だろう。


6月13日、ダダーブの国連事務所内で、地元住民代表と援助機関の協議があった。 ダダーブ難民キャンプは、五つのキャンプに別れており、端から端までの距離は約30キロで、二つの自治体に股がっている。東二つのキャンプはファフィ地区、西三つはラガデラ地区。今回の協議に出席するのはラガデラ地区の地元住民で、事件が起きたファフィ地区とは異なるため、直接関係はないが、事件が起きたことを報告し、こういう事がラガデラでも起きないようお願いする必要があると思った。

地元住民側からは5人、そして20以上の援助機関の代表が集まった会合で、私は立ち上がり、話した。

「私たち、ライフラインは5年前からダダーブで七輪を製造してきました。二つの工場で約40人の難民従業員が働いています。私がライフラインに入った昨年、従業員たちは、地元住民に対して良いイメージを抱いていませんでした。なぜなら、彼らの地元住民についての知識は限られており、薪を拾い集めに行くと、襲ってくる人たち、というぐらいの認識しかなかったからです。

それで、私は、従業員たちに研修を通して語りかけました。『私たちが作る七輪は一体、誰の生活を改善しているのか?』と。従業員たちは、『難民』としか答えることができませんでした。私は、『本当に難民だけでしょうか?確かに七輪を受け取るのは難民ですが、難民が薪を節約し、森林伐採に歯止めがかかれば、そこから恩恵を受けるのは難民だけではないのではないでしょうか?』と。ようやく、従業員たちは七輪プロジェクトが、地元住民の生活改善にも役立つということを知り、難民と地元住民の架け橋に自分たちがなっていることを誇りに感じるようになりました。そして、七輪を通して地元住民と難民が理解を深めていく劇を作り、キャンプの住民たちに披露し始めたのです。『自分たちの住んでいる所に突然46万人の人が押し寄せ、木々を伐採したら、誰でも良い思いはしない。地元住民の人たちも、難民と同じ様に苦しんでいる』と訴え始めました。

しかし、その従業員たちの努力が、先週、すべてぶち壊されました。6月4日、地元の青年組織メンバーが工場を訪れ、1時間以内に工場を閉鎖しろと要求してきました。そして、6月7日、ナイフや斧を持って強制的に工場を閉鎖させ、「明日以降、出勤したら殺すぞ」と従業員たちを脅しました。

彼らは、ライフラインが難民従業員しか雇わないことに腹を立てたようです。しかし、この様な暴力行為から得られるものは果たしてあるのでしょうか?私たちは、ケニアの森林伐採を食い止めるため、地元住民の生活改善のため、七輪プロジェクトを始めました。

ナイフを突きつけられたことにより、従業員たちの地元住民に対するイメージは再び悪化してしまいました。私たちの工場は現在活動を停止し、難民にとっても、地元住民にとっても、そして私たちにとっても、何の良い結果をもたらすことはありませんでした。雇用も大事かもしれませんが、その団体の活動全体を見て、評価することも大事なのではないでしょうか?もし、私たちの活動について知りたいなら、いつでもご案内させていただきます」

地元住民側は、頷きながら私の話に耳を傾けてくれていた。「ラガデラ地区内では特に問題はありませんか?何かあれば、私たちが仲介しますから、連絡してください」と気遣ってくれた。

現場で奮闘しているモウリドとアヤレのためにも、今、私がここでできることは、この事件の事を1人でも多くの人に知ってもらい、同じことが繰り返されないよう警鐘を鳴らすことぐらいだ。工場Aの作業が停止されて1週間。まだまだ、苛立つ日々は続く。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。