人生、初めての賄賂

4日午前、ナイロビの日本食材が売っている店で豆腐やらコンニャクやら仕入れに行った帰り道、友人から電話が入り、運転中だったが、電話に出た。

そこを、検問中の警察に見られ、呼び止められた。

「運転中に携帯で話してはいけません。運転免許を見せてください」

やばーい!免許はもう一台の車に置きっぱなしだった。ここは潔く、「忘れました」と答える。

「あなたは、運転中に携帯で話し、後部の車両がつまり、渋滞を引き起こしていた。それがわかっていますか?」と警察官。

「渋滞なんか起きてない」と私。

「先ほど、ここで事故があったばかりだ。あなたの様な運転は、危ない。事故を引き起こす恐れがあります」と警察。

「なんで、私が事故を引き起こすなんて、あなたにわかるのか?」と私。

ここで、警察の表情が険しくなる。「わかるのか、わからないのか、そんなことは、私たち警察が決める事だ。あなたに尋ねられる筋合いはない。とりあえず、近くの警察署まで同行お願いします」と、2人の警察官が私の車の助手席と後部座席にそれぞれ入ってきた。長さ約50センチほどあるライフル銃が、それまで車内にあった週末の平穏な雰囲気をぶち壊す。

私は、仕方なく、彼らの言う通りに車を走り出した。間違いなく、彼らは賄賂を要求してくる。免許不携帯の私に、罰金を逃れるすべはない。問題は、額をどれだけ下げられるかだ。数ヶ月前、妻も同じ様に警察に尋問され、6000シリング(約6000円)取られたばかりだ。

助手席の警察官は、「これから、あなたは、警察署で、まず手続き費用5000シリングを支払います。それから、来週、裁判所に行っていただき、最高3万シリングの罰金を支払わされます。運転中の携帯通話は、今年5月までの罰金1万シリングでしたが、今は3万シリングまで上がりました」

私は、「わかりました」と平静を装った。ここで、「そんな時間はない!」などと苛立てば、こちらの弱みを見せる事で、彼らの要求額は跳ね上がるだろう。

警察官は「手続き費用は持っていますか?裁判所に行くのは、いつがいいですか?」などと私の都合を聞いてくる。

私は「お金はあります。裁判所出廷は、そちらの都合に合わせます」と、従順な市民を演じた。

警察官は、「そうですか」と、それまでの強い口調が、若干、弱まった。

私は、考えた。相手の同情をかうような、作り話を。「実は、妻が昨日から病気で、今病院にいるのです。それで、妻からの電話で、どうしても、出なければいけなかった。運転中に電話に出ることはいけないと分かっていたのですが、妻の事が心配で、、、、」。

警察官の表情は一変する。「え!どこの病院?」

私は、「アガカン」と即答。2年前、私が熱を出して、お世話になった総合病院だ。ここで、即答しなければ、私の話が怪しまれると思った。

警察官は「入院したのか?」と尋ね、私は、頷いた。

「じゃあ、早く行ってあげないと。なぜ、それを早く言ってくれなかったんだ。私にも妻がいる。君の気持ちはよくわかる」と警察官。
「とりあえず、この手続きを終わらせましょう。それから、私は病院に行きます」と伝える。

しかし、警察官は、「何か、私たちにできることはないかな?こういうのは、どうだろう?私たちの昼ご飯代を出して、このまま病院に行くというのは?」

来たーー!賄賂要求。

「昼ご飯代って、いくらなんですか?」と尋ねると、「3000シリング」と言う。私は「へ!!」と驚く。そんな高級ランチ、どこにあるのだ。

そしたら、「じゃあ、2000シリングでいい」と言ってくる。

妻が6000シリング払わされた事を考えれば、2000シリングは、低い。それに、免許不携帯のことをつかれたら、こちらも不都合が生じる。

私は、黙って車をとめ、財布から2000シリングを出した。

払った後、もっと、額を下げられたのではと、少し後悔。政府が腐敗しきったケニアは、法の支配も確立されず、良い意味でも悪い意味でも、「ごね」が効く。


ちなみに、警察に呼び止められた時に、私に電話をしたのは妻ではなく、隣人。しかも、用件は、「私の分のこんにゃくも買ってきてー」。なんで、こんなくだらない電話に、出たのだろう??後悔してもしきれないものがある。

警察から解放された後、私は、隣人に電話を返した。「賄賂、割り勘にしない?」。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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