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腹心の失踪 (その6)

工場の従業員を全員集めて、ファラの失踪について事の経過を説明し、「皆さんがファラを見たのはいつですか?」と尋ねた。

皆、「10月1日」「10月11日」などの返答だった。と、思ったら、1人、「10月13日」と言う者がいた。

10月13日は、家族がファラを最後に見た日の翌日だ。アブデュラヒ(仮名、男性)は、その日の様子を話してくれた。

「キャンプの市場で、私が親戚の携帯電子マネー専門店(ケニアでは「MPESA」という携帯電話でお金を送金できるシステムがある)で店番をしていたら、ファラが入店してきました。午後2時半ごろだったと思います。『携帯からお金を引き出したい』と机を手で叩きながら言いました。とても焦っている様子でした。普通なら『仕事はどうだ?』などと世間話をするのですが、そんな余裕もない様子でした。私が、自分がただの店番で、お金を引き出すやり方を知らないと伝えると、ファラは店内の椅子に座り、店主が来るのを待ちました。ファラは誰かからの電話に出て『もう少し、待ってくれ』と伝えていました。そして、数分して、私に『まだか?』と尋ねてきました。しばらくして、店主が来たので、私は店を出ました。ファラがどれだけお金を引き出したのか、わかりません」

これが、私の知っている限り、ファラの姿が目撃された最後の時だ。誰かに脅されてお金をかき集めていたのか、 お金を持ち出して逃げ出そうとしていたのか、どちらとも解釈できる行動だ。

その後、私は、全従業員に「ファラに変わった様子はなかったか?」「ファラはお金を持ち去って逃げるような人間だと思うか?」など、お決まりの質問をぶつけ、「特に変わりはなかった」「その人次第で、わからない」というお決まりの答えが帰って来た。

 さらに、「あなたがもし、月3万シリング稼いでいて、50万シリングの管理を任されたら、家族や親戚、仕事をすべて投げ出して、そのお金を盗んで逃走するか?」などと、何の生産性もない質問までしてしまった。従業員たちが「逃走します」なんて、答えるはずもないし、答えたとしても、何の解決にもならない。疲労で、頭の回転が鈍っているのかもしれない。

他の従業員がファラを最後に見たのは5月11日。ファラは、その日、七輪の説明会で使う鍋を工場に取りにいき、説明会の会場まで持って行ったという。説明会が終わった後は、鍋を再び工場まで返しに行ったが、工場の中までは入らず、門番に預けたという。「私たちを避けていたのか、急いでいたのかわからないけど、今考えると、不自然な行動だった」と従業員たちは振り返った。

ファラの行動を振り返ると
9月25日:長期休暇に入る私から82万シリングを受け取る。
 10月1日:従業員に給料を支払う。従業員と小さな「いざこざ」がある。
10月2日:私にメールで、従業員の規則違反を報告。この日以降、携帯電話での連絡がとりづらくなり、仕事をしている形跡もなくなる。
10月11日:七輪の説明会に鍋を持ってきて、説明会の様子を視察。この日前後で、50万シリングを預けていた店から引き出す。
10月12日:朝、いつもの様に「仕事に行く」と家を出たまま、戻らなくなる。メールで説明会の進捗状況を私と私の上司に報告。
10月13日:キャンプの市場で携帯電話からお金を引き出そうとしているところを従業員に目撃される。

うーーん。全くわからない。11日にのみ出勤した理由は何なのか?13日に、そんなにあからさまに、焦った態度を見せた理由は何なのか。その時点で、アブデュラヒは、まさかファラが行方不明になるとは思っていないはずだから、もし、お金を持ち出そうと考えていたなら、できるだけ平静を装うとしないだろうか。本当に誰かに脅されているなら、誰にも相談しなかった理由は何なのか?考えれば、考えるほど、深い迷路の中に入り込んでいく。全く違う思考回路があるのか、私たちの知らない事情があるのか、、、。

私は、従業員たちに「今は、ライフラインにとって一番、困難な時です。治安も悪化していますし、お互いのことを気にかけ合いながら、仕事に取り組んでください。ファラは10月1日以降、行動が不自然になっていました。誰かがその事に気付いて、自宅を訪問するなどしていれば、同じ結果にはなっていなかったかもしれない。これ以上、問題が起こらないよう、就業規則に沿って行動し、お互いに言葉を掛け合いながら仕事して下さい」

皆、こわばった表情をしていた。ファラを心配しているのか、お金がなくなったことで、工場運営への影響を心配しているのか。質問などはほとんどなく、リーダー格のレゲが「ファラが無事に戻って来てくれる事をねがっています」とだけコメントした。

その後、ナイロビからスーツケース満杯にして持って来た私の古着を従業員たちに配った。 ズボン、シャツ、帽子、靴などなど。時間厳守を奨励するため、この日のミーティングに早く到着した従業員から一つ一つ選んでもらった。毎日、ダダーブで、テニスやバスケをして穴が空いたナイキの運動靴は、さすがに拒まれると思ったが、何と、一番先に取られていった。中には、10年前に買ったズボンなどもあったが、皆、大喜びで、その場で身に付けて帰っていった。よく見ると、ほとんどの衣類が、妻に買ってもらったものか、義父から譲り受けたものか、ラクダレースなどの大会の参加賞で、自分で買った物が2、3個しかなかった、、、。たまには気分転換に買い物でもしないとな。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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