「超」非正規労働者である私

11月11日朝日新聞デジタル版連載「民意のありか」から抜粋。
 
「総務省の労働力調査(2010年)によると、非正規で働く34歳以下の若者が同年代の働く者の27パーセント。20年前に比べ10ポイント増えた。好転の兆しは見えない。 『生活の安定』という幸せの土台が足元で揺らいでいる。」

 毎日新聞社を辞めて、1年という短期契約でアフリカの難民キャンプに乗り込んだ私も、34歳以下の非正規労働者の割合を増やす要因だ。収入も半分くらいになった。でも、私は、正社員だったころよりも、ずっと今の方が幸せだ。

 非正規労働者が増加したら、不幸な社会になるという議論は、当たっているかもしれないが、何か問題の本質が抜け落ちているよう気もする。

 国際協力業界は、「超」非正規社会だ。契約は1年、2年が普通。国連や政府系機関なら待遇はそれなりに良いが、(特に日本の)NGOなどは、一般企業とは比べものにならない。さらに、団体が自分との契約更新を望んだとしても、ダダーブなど過酷な生活環境で働いていたら、2年か3年で疲弊して、契約を更新できない状態になってしまう。実際、半年やそこらで辞めて、祖国へ帰る人もいた。

 確かに、次の仕事が見つからなかったらどうしよう、という不安はないと言えば嘘になる。でも、この仕事には、その不安に勝るだけの刺激がある。全く異なる文化の人たちとの信頼関係を築き、「ありがとう」と感謝される時の達成感というのは、日本の会社員時代にはなかなか得ることのできないものだった。

 「職を転々とする」と聞くと、どの職場でも成功できない人間みたいなイメージで語られることがあるが、常に新しい刺激を求めた結果、転職しているだけなのかもしれない。問題は、社会が、そういう生き方をどうみているかだ。

 私が、「もうそろそろ仕事辞めて、体を休めようかな」と言うと、「それって、『ひも』になるってことですか?」と言われることがある。妻が働き、私が少しでも働かないということは、自動的にそういうレッテルを張られるということに、驚いた。

 毎日新聞を辞めた後、3ヶ月ほど、アフリカへ派遣されるまでの待機時間があった。その時も「毎日、何やっているの?」「収入なくて、どうやって生活しているの?」「妻に養ってもらっているの?」などと何度か言われた。

 人は常に働き、家族を養うべき。非正規の人たちが不安になるのは、正規社員との物質的待遇の格差も一因だろうが、「非正規」という生き方や価値観を尊重できない日本社会にも、原因があるのではないか。
 
 多様な生き方を認め合い、人と人との絆が生まれて、本当の幸せは見つかるものだのだと思う。
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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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