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真相を探る

ダダーブを出る前、停職処分を受けながら、その後、立ち直り、優秀従業員として表彰されたドウボウと話をした。なぜ彼が報告書に偽りの記載をしたのか知りたかったし、全面ストライキなど色々問題があった工場Aの真相を探りたかった。工場Aはずっとラホの支配下に置かれ、ラホの親戚が雇用されるなど、私の知らない闇があるような気がして、ずっと気になっていた。ドウボウとはそれなりの人間関係ができたし、もう、ダダーブを去るのだから、胸襟を開いてくれるかと期待した。

私:停職処分を受けた時はどう思った?
ド:自分の失態でしたが、とてつもなく厳しすぎる処分だと思いました。
私:なぜ、偽りの記載をしたの?
ド:その日は主任のラホが不在で、私が任されていました。それで、ナイロビからライフライン幹部が来ると聞いていたので、ノルマの二〇〇個を生産しておいたことにしないと問題が生じると思ったのです。
私:偽りの記載は、それ以前にも横行していたのかな?私が来る前の報告書は、毎日「二〇〇」とか「一五〇」とかきりのいい数字で、私が来た後は「二一二」「百八十八」とかに変わったのだけど。
ド:私自身はやっていません。ただ、、、、報告書記載業務は前の工場長を怒らせないためにやる建前上のものだという認識はあったのかもしれません。
私:自宅訪問した調査報告書も、私が来る以前はほぼすべての欄が「ハッピー」と書かれていたけど、それも同じ理由かな?
ド:はい。難民たちは配布された物に文句を言えば、もう何も配布されなくなると恐れるので、基本的に良いことしか言いません。そして、私たち従業員も悪い事を書けば、プロジェクトが終了して仕事がなくなると思うから、悪い事を書きたくない。

  良い報告書を出してドナーからお金をもらいたい援助機関、仕事を失いたくない従業員、そして、支援物資を受け取り続けたい難民。すべての利害関係が一致し、本当の意味での「支援」ができなくなっていた。

私:工場Aでストライキがあったのは覚えている?
ド:はい。
私:あれは、なんで起きたのかな?
ド:従業員たちは、ラホの遅刻を工場長に密告した人間が誰なのか知りたかったのです。
私:実際、密告者の言う通り、ラホは遅刻していたの?
ド:はい。していました。
私:じゃあ、ラホの失態だとあなたは知っていた。それでも、なぜ、ストライキに参加したの?
ド:参加しなかったら、私が密告者扱いされてしまいます。
私:ストライキ初日、私との話し合いがまとまらずに解散した後、従業員たちで集まっていたようだけど、どんな話し合いがあったの?
ド:密告者が誰なのか教えてもらわない限り、仕事は再開しないことで合意しました。私は、その密告者を吊るし上げる様なマネはしてはいけないと伝えました。
私:でも、私は密告者が誰か言わなかった。それでも仕事は再開された。
ド:工場長の気持ちが私たちに伝わったので、再開しました。
私:ラホは間違ったことをした。それでも、その密告者が誰なのか知ることが重要なの?
ド:何が正しくて、何が間違っているということでなく、内部のことを外部に密告するということは、それだけ大きな罪なのです。

学校で先生に密告する生徒がいじめられるのは想像できるが、成人社会で、それがストライキにまで発展するというのが理解できない。通訳しているフセインも「これがソマリ社会なのです。同胞を裏切るのは最大の罪なのです」と付け加えた。

私:ラホが去った後の工場はどうだった?
ド:仕事がしやすくなりました。ラホは、遅刻しようが欠勤しようが自分の出勤簿には必ず「出勤」マークを付け、気に入らない従業員に対しては容赦なく、遅刻や欠勤マークを付けていました。でも、それを工場長に伝えられるだけの勇気が誰にもなかったのです。
私:最後に何か言いたいことは?
ド:長い間、ありがとうございました。今、考えれば、あの停職処分のおかげで、今の自分がいるのだと思っています。仕事を責任もって果たすということを、工場長に教わりました。この恩は一生忘れません。

同胞を裏切ることが最大の罪の社会にいるドウボウにとって、これらのことを私に打ち明けるのは、相当の負担だったはずだ。ドウボウと抱き合いながら、私は改めて「ありがとう」と伝えた。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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