私の提言記事が新潟日報(2月1日朝刊)に掲載されました

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北アフリカ・アルジェリアで起きた武装勢力による外国人人質事件は、拉致や爆弾事件が繰り返される東アフリカの難民キャンプで先月まで3年近く働いていた私に衝撃を与えた。欧米諸国はテロリスト掃討に力を入れると言うが、軍事的解決に頼るだけではなく、人道援助や投資を通して、どう現地住民と関わっていくべきか問い直すべき時に来ている。

 東アフリカ、ケニアのダダーブでは、内戦が20年以上続く隣国ソマリアからの難民ら約46万人が暮らしている。教育や雇用の機会が限られ、アルカイダと同盟関係にあり、ソマリア南部を実効支配するイスラム武装組織「シャバブ」の予備軍がいると、国際社会から長年懸念されてきた。

 2010年、私がダダーブの国連事務所で働き始めた頃は、拉致や爆弾事件は皆無だった。しかし、11年10月にケニア軍がソマリアでシャバブ掃討作戦を開始したことによって、その後、ダダーブのケニア警察などを狙った爆弾事件が多発し、20人以上が犠牲になった。また、シャバブを敵視する欧米諸国に本部を置く援助機関スタッフの拉致事件も3件起き、私の友人ら計7人が連れ去られ、内3人はいまだ行方不明だ。

 つまり、長年「予備軍」はいたが、彼らが犯行に及ぶ「動機」ができるまでは、ダダーブの治安は比較的安定していたのだ。それでは、なぜ、20年間、食料、医療、教育を無料で提供し続けた援助機関スタッフを、受益者である難民が狙うのだろう? 無論、お金で勧誘されたのだろうが、自分を世話してくれた親をお金と引き換えに殺そうと思う人は少ない。

 援助機関と難民が共に暮らす中で、十分な信頼関係を築けなかったことが「予備軍」に動機を与えてしまった一因ではないか。キャンプには、難民自身で作った大きな市場があり、インターネットカフェやホテル、レストランなどが立ち並ぶ。難民にそれだけの能力があるにも関わらず、援助機関代表が隔週に集まってキャンプの運営方針を決める会議に難民の姿はない。

 また、キャンプ内には英語や現地のスワヒリ語など多言語を使いこなす難民が多くいる一方、文字の読み書きができない難民も多く、教育格差は激しい。失業率も前者は4割で、後者は8割。にも関わらず、援助機関が提供する職業訓練や研修などは、告知や実施が英語で行われることが多く、高等学校を卒業したエリート難民が機会を独占してしまっている現状がある。

 今回の事件現場は海外の投資先である天然ガス施設。私たち外国人の存在が、現地の一部の人間にしか富をもたらさない場合、予備軍に新たな「動機」を与えることになりかねない。折しも、今年は5年に1度のTICAD(アフリカ開発会議)が日本で開かれる。植民地時代の影がいまだに残るアフリカで、中立に見られる日本だからこそ、住民主体の開発について再考する機会を作ってほしい。(元NGO職員)
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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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