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「私は主夫です」と胸を張って言える社会に


主夫歴半年となり、ようやく「私は専業主夫です」と胸を張って、自己紹介できるようになった。しかし、今でも、友人が自分の事を他人に紹介する際は、「元新聞記者です」とか「ライターです」などと言い、決して「主夫」とは言わない。

「黒岩さんは本出しているし、主夫じゃないじゃないですか」

「『主夫』ではなく、『ジャーナリスト』とか言ったらどう? 」

と、まるで私を慰めるかの様に話しかけてくれる人もいる。

でも、何故か腑に落ちない。

確かに本は二冊出し、印税収入があるから「作家」や「フリーライター」と自己紹介しても通るかもしれない。しかし、それが食べていけるだけの収入になっているかどうかと聞かれれば、間違いなく「ノー!」である。

まあ、そんなことはどうでもいいとして、何故、自分が「主夫」と主張することを周りは否定したがるのだろう。「ジャーナリスト」や「作家」が「主夫」よりも格上の様な扱いになっているのが気になる。

主夫会のメンバーも誰一人として、「私はハウスハズバンド(主夫)」と言う者はいない。ニュージョンは「今年初めまでは大学院の論文を書いていて、3月、4月はアメリカに帰国していて、色々忙しい」とかだらだらと自分の肩書を濁す。主夫だけじゃなく、主婦もそうだ。先週会ったアメリカ人女性(30代)は夫がBPで働く。「ここではマッサージとか英語を教えたりしている」と自己紹介。私が「ハウスハズバンド」と言うと、「実は私もそうなんだけど、はっきり言えないのよね」と言った。

なぜ「主婦/主夫」であることを胸を張って他人に言うことができないのか?
 私が子どものころよく見たテレビドラマに出てくる「主婦」は、よく、平日昼間、美容室で髪の毛をくるくる巻きにし、ファッション雑誌を読みながら他の主婦と雑談を交わしたりしていた。

私がアゼルバイジャンに来て間もなく、毎週金曜午前にある「コーヒーモーニング」に参加したら20人の婦人に囲まれた話をある男性外交官(先進国出身)に話したら「ああいう婦人たちはね、贅沢することしか頭にないから、付き合わないほうがいい」と言われた。

ケニアで知り合ったある日本人男性(子育て経験なし)は「主婦の人って、自分勝手だと思うんですよ。お金稼がないくせに『女性の権利を認めろ!』とか言ってね」と言っていた。

実は、私自身、このブログを始める時、副題に「新聞記者から主夫になり下がった体験記」と記していた。妻に「なり下がったってどういうこと?」と尋問され、変更した。無意識の内に、自分の中にも「主夫/主婦」に対して否定的なイメージがあったのだ。

しかし、主夫になって半年になり、他の主夫の体験を聞くうち、「主夫」とは胸を張れる肩書きだと思える様になった。主夫/主婦になるということは、家族のために、自分のキャリアと妥協し家事や育児に専念するという、他者を思いやる気持ちに溢れた行為だ。「新聞記者」や「援助機関職員」など肩書きがあると、どうしても、その肩書を守る「エゴ」が出てきてしまう。特ダネたくさん書きたい。立派な成果を出して、社会に認められたい、など。

私はこれまで、アメリカ、スウェーデン、オランダ、タイ、ケニアと移り住んできたが、何度、移住を繰り返しても、新天地に住み始める時に襲われる孤独と不安から逃れることができなかった。でもアゼルバイジャンでは、妻が一緒だったため、それほどの精神的負担はなかった。おそらく、それは妻も同じで、私が付き添ったおかげで、よりスムーズに新天地に馴染めたはずだ。

そして、主夫が抱えるのは単なる家事だけでなく、異国ならではの問題への対処がある。水/電気が止まる。呼び出し音が壊れる。お湯が出ない。シャワーの排水口から変な臭いが出る。門番の人と言葉が通じない。見知らぬ人が呼び鈴を鳴らすが、言葉が理解できないからドアを開けられない。これらの問題を、仕事を抱えながら対処するのは大変だと思う。

男性と女性の教育水準(大学進学率など)は、先進国ではほとんど同水準になっている。一方、グローバル化が進めば、国をまたいで仕事をする転勤族の需要は増え、それに付き添う「主夫/主婦」の需要も増える。ということは、付き添う側が、付き添われる側と同等の教養レベルを有している可能性はこれまで以上に高く、付き添う側の「妥協度」もこれまで以上に高いものとなる。 アゼルにいる主婦の人たちの経歴は、ざっと「小学校教諭」「政府系機関職員」「役場職員」「大手石油会社職員」など。

家事/育児の役割が、これまでずっと特定の社会集団(つまり女性)が担ってきたために、「主婦」という言葉に虐げられたイメージが付きまとってきたのかもしれない。人と人との絆が薄れていると言われる今日このごろ、絆を守るために自分のエゴを捨てる人たちを、私は心から敬いたい。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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