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アフリカから見た広島カープ (中国新聞8月27日掲載)

 中国新聞記事黒岩

 新潟生まれの私がなぜ赤ヘルファンになったのか。物心ついた時、6人いる兄姉が応援していない球団で唯一強かったのがカープだったからだ。小学生の時、日本シリーズの応援に西武球場へ出かけ、北別府学投手の200勝記念試合は同級生と2人で広島まで行き、見守った。

 昨年末まで3年間、私はアフリカの難民キャンプにある国連事務所やNGOで支援活動に携わっていた。カープ熱は冷めるどころか、逆にもっと好きになった。

 難民キャンプは、カネを握る欧米諸国の援助機関の論理で動く。難民のニーズに合わない援助が進む現実を前に、理想を見失いそうになることが何度もあった。

 そんな時、思い出したのがカープだった。エースや4番打者を他球団に放出しながらも、Aクラスに食らいつこうとする姿にどれほど勇気づけられたことか。

 内戦が20年以上続く、東アフリカのソマリア。そこから逃れてきた約万人が生活する、隣国ケニアの難民キャンプで私は働いていた。

 キャンプにはホテル、レストラン、インターネットカフェなどが立ち並ぶ。車やパソコンを所有する難民もいる。ソマリア人は欧米諸国にも数万人単位で移住しており、同胞からの送金などで難民自身の手で一つの「都市」を形づくってきた。

 ある難民の男性は、ケニアの首都ナイロビから太陽光パネルを購入し、携帯電話の充電サービス屋を立ち上げていた。難民の中にこうしたバイタリティーがあるにもかかわらず、キャンプの運営は設立時から20年以上、援助機関が牛耳り続けている。隔週で開かれる代表者会議に難民の姿は無かった。

 高卒の学歴がある難民は、英語や現地のスワヒリ語など多言語を使いこなし、多くは援助機関で働いている。しかし、大事な意思決定や運営資金の管理は外国出身の従業員の担当である。難民の従業員には通訳といった雑用しか回ってこない。

 高校の卒業式でも司会者や来賓はすべて、ガウンを着た援助機関の幹部。難民の従業員は私服姿のまま、会場設置に追われていた。通訳の難民男性は流ちょうな英語で「難民の卒業式なのだから、俺たちにできることは俺たちにやらせてほしい」と歯がゆさを押し殺していた。

 キャンプには、机やベッドを作る難民の大工が100人以上いた。それなのに国連の要請で中国製の学校机が数万台、どかっと寄贈され、彼らが仕事をする機会を奪ってしまったこともある。

 就職の機会が限られる難民に対し、援助機関は職業訓練などの場を提供する。しかし、その告知や研修には現地の言葉ではなく、英語が使われる。読み書きができず、失業率の一番高い10万人以上の難民は結局、蚊帳の外に置かれてしまう。

 キャンプには年間数十億円規模の援助資金が国連などから支給される。それが難民と援助機関と力関係に及び、難民はなかなか声を上げづらい。援助機関が難民6千人以上の就職口になっているから、なおさらである。

 私はNGOに勤務していた当時、難民の従業員40人の監督に当たった。「このキャンプをあなたたちだけで運営できるようにするのが私の夢です」と伝え、運営資金の管理など、他のNGOより多くの責任を任せようとした。ところが、全幅の信頼を寄せていた部下が運営資金と共に姿をくらまし、私の理想は見事に打ち砕かれた。

 「やっぱり援助機関が管理するしかないのか…」。諦めそうになった時、「若者フェスティバル」という難民たち自身で企画したイベントに参加した。歌や踊り、劇などを通じ、若者たちは「援助機関に頼らず、自分たちの足で立てるようになろう」とメッセージを放ち、数千人の観衆を集めた。数十倍の資金を投じても数十人しか集められない援助機関主導のイベントとは対照的だった。

 そこにあったのは人の絆とか情熱だとか、お金の論理を超えたものである。熱のこもったカープファンの応援風景と重なるものが感じられた。

 世界は今も「強者」の論理に振り回されている。そんな世界に立ち向かう者に夢を与えてくれたのも、カープが戦後の広島を精神的に支えてきたチームだからこそなのだろう。今年こそAクラスを目指せ、広島カープ!
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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