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求められているのは解決策でなく、思いやりだった

バクー写真

カンボジアと日本に約2ヶ月滞在し、9月1日にアゼルバイジャンに戻った私。まずは、上写真の様に、カスピ海を眺めてリラックス。

次の日、久しぶりにATMでお金を降ろそうとしたら、降ろせない。日本でクレジットカードとして使おうとしてもできなかった。カードは妻の名義のため、銀行へは妻が行かなければならず、火曜日朝、妻は仕事を抜け出して、夫婦名義にしてもらうため、一緒に銀行に向かった。

午前9時10分、銀行に着くと、開館が午前9時半からということを知る。「じゃあ、その辺でコーヒーでも」と歩き、9時45分ごろ、銀行に戻ると、フロアはたくさーんのお客で溢れていた。日本の銀行同様、番号札を取って待つのだが、機械のボタンを押したら「138」の番号札が。妻は「うわー。まだ103番だよ。こりゃ、時間かかりそうだなー」と言う。しかも、問い合わせ内容に応じて、番号の種類が変わるため、中には「615」や「R50」などの番号も混じり、私たちの前に50人以上が待っている計算になる。

私たちは大のせっかち夫婦。半日も銀行で待つなんて考えられない。「なぜ、こんなことに?」と考えれば、考えるほど、妻を責めることばかり考えてしまう。

妻を責めてはいけない。笑顔で待てばいい。待つしかないんだ。ここで喧嘩しても何の意味もない。自分に頭でそう言い聞かせる。

しかし、妻が「前来た時も、ものすごい混んでたのよー」とか言うと、「だったら、コーヒーなんか行かずに、そのまま銀行の前で待つべきだった!」と言ってしまった。妻は「それは午後だったから、午前にこんな混むなんて思わなかった」と二人の間に殺気がみなぎる。

一度、文句を言い出してしまうと、次から次へと雪崩のように降ってくる。「そもそも、私が付き添う必要があったのか?」「夫婦の名義にする必要性もそこまでないのではないか?」などなど。

 番号札を呼ぶアナウンスが「105」から「106」へ。とても時間の流れが遅く感じる。スマートフォンを見て時間を潰そうとするが、すぐ飽きる妻は「ああー。30分で3人しか進んでない。この国は何でも遅いな!」と苛立ちを隠さない。

私は持って来た小説を読みながら「もう、落ち着こうよー。そんな焦っても、早く進むわけじゃないんだから」と宥める。しかし、妻は「私は今、勤務時間なのよ!」と言い、私は「それ、どういうこと?私だって、今日、やろうと思っていた『仕事』がたくさんある」と応戦。妻は「あなたは仕事がしたいの?」と尋ねてくる。私は「いや。今の言い方だと、私は仕事がないから、何時まで待っても大丈夫というように聞こえたんだよ」と応戦。

私は「ちょっと緊急の用があるから、特別に早く対応してもらえるようお願いしてみたら。このままだと12時を過ぎる可能性もあるよ」と妻に話した。

知らない人に何かを頼んだり尋ねたりすることが苦手な妻は、しばらく考えて、「じゃあ、ヨーコーが行ってきて」と言う。

私は考えた。どうにかして、番号札の順番よりも早く対応してもらい、妻をこの銀行から一分でも早く出してあげる方法を。

「111番の方、3番の窓口へお進み下さい」のアナウンスを聴き、111番の男性が窓口に座るのを観察した。 男性は番号札を窓口の女性に渡していない。「これだ!」私は、妻の耳元で囁いた。

「窓口で番号札は確認していない。だから、アナウンスされた番号の人が待ちきれなくて銀行を出ている場合、その番号札を持っている振りをして窓口へ行けばいい」と。妻は「ええ?」と苦笑いをしながら、「いいね」とも「いやだ」とも言わなかった。私は「我ながら完璧な案を思いついたものだ」と自分に酔っていた。

私は、番号が呼ばれる度に、周りをキョロキョロ見回した。毎回、ことごとく、アナウンスと共に、窓口へ向かって歩み始める人がいたが、「117番」の時、ついにその時がやってきた。誰も反応していない。3秒、5秒待っても、誰も立ち上がらない。

私は「今だ!行け!」と妻の体を揺すった。しかし、妻は「いいよー。番号札見られたら、どうするのよー」と動かない。私は「今行かなければ、後20人以上も待ち続けるんだよ!」と言うが、妻は腰を上げようとしなかった。

結局、「118番」のアナウンスが流れ、私は、妻の手にあった「138番」の札を握りしめて、妻に投げつけた。自分が頑張って考え抜いた案が廃案にされ悔しかった。

「なんで行かなかったんだ?絶好のチャンスだったのに」と私が言うと、「だって、それはルール違反でしょ。『渋滞だから、反対車線で行け』と言うようなものよ」と妻。私は「反対車線で行ったら誰でもルール違反だとわかるけど、存在しない番号札の振りをするのは、誰にもわからないだろ」と反論。

妻は「そんなこと言うなら、あなたが行ってくれたらよかったのに」と言う。私は「あなたの名義になっているのだから、あなたが話さないといけないでしょ」と言うが、「別に、あなたが先に行ってくれたら、私が後から付いて行くじゃない」と妻。「だったら、君が最初から行くのと同じじゃないか。それに、『時間かかるなー』と文句を言っていたのはあなたでしょ。私は別に待っているのはそんなに苦じゃないから」と言った。

そこで妻の表情は曇った。「『私は大丈夫だけど、あなたが辛いならあなたがやれば』というのが一番ムカツクのよ!私が辛かったら、あなたもその気持ちを共有してほしいの。私がそういうルール違反みたいなのを堂々とできる人間じゃないとわかったら、あなたが代わりにやってくれてもいいじゃない?私の問題はあなたの問題でもあるべきでしょ?」と言う。

私は「だって、これはあなたの銀行口座でしょ?」と繰り返し、妻は「私のは、あなたのものでもあるでしょ?」と繰り返し、堂々巡りが続いた。

結局、138番は午前11時半ごろにアナウンスされ、約2時間、銀行で過ごすことになった。

私は、帰り道、「もうお昼だし、何か美味しいものでも食べて行くか?」と笑顔で声かけたが、妻は「あなたとはいかない」とまだ怒っている。「今日はスージンと午前中、ずっと一緒に過ごせて嬉しかったなあ」と作り笑顔で話すが、妻は「全く、そんな風に見えなかったけど」と一蹴。私は「僕が悪かったよーー。スージンのこともっと考えて、私が窓口に行くべきだったよね。ごめんね。次からそうするから。スージンが困っていることは、私にとても困っていることでもあるのだから」と伝え、二人で「香港」という中華料理に立ち寄った。

酢豚と牛肉のオイスター炒めを食べながら、妻にようやく笑顔が戻った。

妻の問題に対し、解決策を出そうとする夫。解決策を出そうとする夫に、「思いやり」を求める妻。この「行き違い」は当分、続きそうだな。

次は「117番」の振りして窓口へ行けるよう、頑張ろうー。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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