私は主夫ではなかった


7−8月に日本に帰った時、「それでもお前は『主夫』なのか?」と色々な人から言われ、自信喪失した。

まず、私の家に、週一回、家政婦さんが来て、掃除と洗濯をしてくれること。

次に、夕ご飯作りは、午後5時半に帰宅してくる妻と共同でやっているということ。(最も、妻がロシア語を火曜日と木曜日の5時半から学び始めたため、これらの日の夕食作りは私だけになった)

 そして、「弁当作り」といっても、前の日の夕食の残りなどを詰めるだけだということ。

最後に、私が妻より日本に長く滞在したということ。「ええ?『主夫』なのに、一緒に帰って、身の世話をしてあげなくて大丈夫なの?」ってな感じで。

長姉には「要するに、朝ご飯作り。買い物。夜ご飯は共同。やっていることはそれだけ?」と言われた。

うーん。私は「主夫」という言葉を誤解していたのかもしれない。定義は千差万別というのはわかるし、私だって、72歳の男性が「主夫」を名乗って、新聞に「男性も私みたいに台所に立とう」とか投稿しているのを見ると、「定年退職したら、そりゃ、料理くらいするだろ」と皮肉ってしまう。

私は、家族のために、自分のキャリアを諦め、アゼルバイジャンという、就職活動が困難で、英語があまり通じず、知り合いが一人もいない国へ身を投じた時点で、「俺って結構、家族想いな『主夫』じゃない?」って思っていた。

自分は英語が多少できるから、「主夫会」に出たり、他の外国出身の友人を作る方法があるが、もし、私が英語を話せなかったことを想像すると、背筋が凍り付く。アゼルには日本人が2−30人しかおらず、大部分は働いているため、日本語しかできない場合、平日昼間は、ほとんど家に「監禁状態」になる可能性が高い。(もちろん、町を散歩とかはできるけど、、)

英国レセプション
(英国大使館レセプションに妻と出席した時。各国の大使らが参列する場で英語が話せなかったら、かなりしんどいだろうなー)


新聞記者とか工場長とか、それなりの肩書を捨てて、監禁状態になるリスクを背負って、愛する妻に付いて行く「主夫」。そのうえ、できる限りの家事もやっていて、「俺って、結構、凄くない?」、という感覚だった。

しかし、日本でいう「主夫/婦」はちょっと違った。まず、相手(多くの場合は男性)が転勤などで場所を移動する場合、キャリアと妥協して、一緒に付いて行くのは「あたりまえ」の行為で、それだけで「主夫/婦」の称号は得られない。

キャリアと妥協した上で、さらに、ご飯作り、掃除/洗濯、皿洗い、買い物と付きっきりで相手の面倒を見なくてはいけないようだ。

そんなの無理!

1回3000円で家政婦雇える経済的余裕があるなら雇いたいし、自分の将来のキャリアのためにも、限られた方法の中で、韓国語勉強やブログ執筆にできるだけの時間を費やしたい。

私が「主夫」でないなら、アゼルバイジャンで働く妻/夫に付き添っている女性/男性の多くは「主夫/婦」にはなりえない。フリスビーを毎日投げ続けるロドニーは、家政婦が週5日来るし、運転手が買い物をしてくれる。

夫がEU代表部(ヨーロッパ連合の大使館みたいなもの)で働くオランダ人のゲルマ(40代)は、「私は料理が好きじゃないから、あまりしないの」といつも言っている。基本は外食で、家で食べる時は、サラダとか簡単な物を作るだけという。(もちろん家政婦付き)

それでは、私やロドニーやゲルマの肩書は何なのか?個人的には肩書なんて必要ない、と思っている。ただ、元新聞記者として、好奇心がくすぐられるだけだ。

記者は事件原稿を書く際、容疑者や被害者の名前、年齢、職業、住居、まで記さなければならず、「新潟県警は、黒岩揺光容疑者(32)=主夫、南魚沼市=を22日、窃盗の容疑で逮捕した」みたいになる。

「無職」?でも、家族のために、仕事したくても、就労ビザが降りにくい国に身を投じているのに、ゲルマやロドニーが失業者扱いされるのはなんかムカツク。

英語だと、「Trailing Spouse」(付いて行く配偶者)という言葉があるけど、「肩書」とはちょっと違うな。

何か新しい言葉ないかな。「付き人」だけだと、なんか、専門性がないみたいだから、「付き添い専門家」とかどうだろう?

ストーカーに間違われそうだな、、、。
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プロフィール

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黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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