「週末」なのに、週末な感じがしない主夫生活


毎日のご飯作りと買い物だけでも結構大変なのに、それに引っ越しと交通トラブルが一緒になるともうドタバタだ。

ご飯作りの何が一番大変って、メニューを考える事。月曜はこれ、火曜はこれ、朝ご飯はこれ、お弁当はこれ、そして、夜ご飯はこれ。一つの仕事が終われば、すでに次のご飯が待っている。次の日が待っている。ずっとメニューに追われる日々になる。私は朝ご飯をがっつり食べないといけない体質なので、他の人の様に、朝ご飯を食べないとか、パンだけで大丈夫だったら、どれだけ楽なことか、と考えてしまう。スージンも朝ご飯は食べなくても大丈夫なはずだったのに、私が主夫になってからは、なぜかがっつり食べるようになってしまった(涙)。

先週の献立はこんな感じだった。

11月18日

朝ご飯。 日本から持ってきた讃岐うどんに白菜とベーコンで。

お弁当。 日曜夜に作ったインドカレーの残り。

夜ご飯。サバの煮付け。大根の味噌汁。パセリサラダ。白菜の浅漬け。

11月19日

朝ご飯。カリフラワーを醤油/酒で炒めもの。前の晩のサバの煮付け。海老と卵の中華スープ。

弁当。 茄子、タマネギ、ベーコンのオイスターソース炒めとご飯

夜ご飯。友人とレストランで食事。

11月20日

朝ご飯。ベーコンと白菜の炒め物。モヤシと豆腐の味噌汁。

弁当。 海老のお好み焼き。

夜ご飯。トンカツ。ポテトサラダ。キャベツの千切り。カブの味噌汁。

11月21日

朝ご飯。韓国の辛ラーメン(妻のリクエスト)

弁当。前の晩のトンカツとカリフラワーのサラダ。

夜ご飯。鶏肉、豆腐、白菜、大根、ネギの寄せ鍋。

11月22日

朝ご飯。前の晩の寄せ鍋のスープでうどん。

弁当。オイスターとタマネギのたらこ風スパゲティー

夕ご飯。友人宅へ招かれる。

スージンは3ヶ月前から、ロシア語を火曜と木曜の午後5時半から学んでいるため、基本的に、夕ご飯も私一人が担当することになった。

16日、17日の週末は引っ越し作業でバタバタだった。さらに、新居に移ってからは、洗濯機に問題があったり、お湯がでなかったりなど、様々な問題を、片言英語の家主に話さなければならない。
さらに、19日夜、新居前の駐車場から車を出そうとしたら、駐車中の別の車に軽くぶつかってしまい、20日は一日中、警察署や保険会社に行かなくてはならなかった。さらに、その日、家に帰ってきたスージンの第一声は「朝の通勤中、お弁当箱をバスに忘れてしまった」と謝る。誰を責めることもできない無力感が全身を襲う。

21日は、アゼルに住む中国人が配達する豆腐やもやしを取りにいき、夕食後は、スージンからキムチ作りを教わった。22日は、約4キロ離れたスージンの事務所に日本から届いた荷物を取りに行った。もちろん、週4回の韓国語講座に通い、毎週木曜日の主夫会にも参加している。
 
そんな多忙な一週間を終え、土曜日朝を迎えた。しかし、なぜか、全然「週末」の気分になれない。なぜなら、正午にスージンが友人を一人家に招待し、「酢豚」を作る予定になっているからだ。朝ご飯を食べなくては一日を始められない私は、午前9時ごろから、台所に立ち、酢豚のための豚肉を冷凍庫から取り出し、ニラとニンニクを切り、フライパンに溶き卵と一緒に入れ、無添加の「野菜だしパック」とかき混ぜる。

30分後に起きてきたスージンは「今、朝ご飯作っているの?12時から昼ご飯にするのだけど?」と言い、私は「俺が朝ご飯を必ず食べなければいけないということは知っているでしょ」と少し苛立つ。ニラ卵炒めとモヤシと豆腐の味噌汁が出来上がり、「朝ご飯食べるの?」と聞くと、 スージンはYouTubeで韓国のテレビ番組を見ながら「メニューは何?」と尋ねる。私は、「自分の目で確かめたらどう?」と、食べるつもりのくせに手伝おうとしないスージンに苛立つ。

数分後、スージンが「私も食べようかな」と食卓に来た。私は、「週末くらいゆっくり休みたいよな。平日は朝ご飯、弁当、夜ご飯と作って、週末まで台所に立ち続けるのって、辛いよ」と愚痴をこぼした。それに対し、スージンは「私だって毎日遊んでいるわけじゃないでしょ?働いているでしょ?」と苛立つ。スージンも、10日前にタイ出張から帰ったばかりで、引っ越し作業もあり、疲れているようだった。

私:週末に友人呼びたいなら、スージンが料理してほしいよ。
ス:別に、あなただけに料理させてるわけじゃないでしょ。私も一緒にするでしょ。
私:でも、酢豚ってことは、私が主体的にやるってことだよね?
ス:ヨーコーが酢豚を食べようって言っていたから、じゃあ、土曜日に友人が来る時にしようっていうことだったでしょ。

私:今週は引っ越しとか交通トラブルとかあって、大変だったでしょ。

ス:もう、朝から文句ばっかりで、食べる気なくした。

スージンはそのままお茶碗をテーブルに置き、二階に行ってしまった。私は、いつもの様に、20分ぐらい時間を置いてから、

私:スーージーーン。怒る事ないでしょー。

と甘い声で、妻の肩をさすりながら、ご機嫌を取ろうとした。

ス:朝から文句ばっかりでムカツクでしょ。

私:週末くらい休みたいって言っているだけだよ。スージンが朝ご飯食べるつもりなら、台所に来て手伝ってくれたっていいでしょ。

ス:私だって週末休みたいのよ。そんなに辛いなら主夫なんてやめたらいいじゃない。

私:主夫辞めて何するわけ?仕事探せる環境でもないでしょ。

ス:夜ご飯作るのは私が手伝っているでしょ。

私:手伝うたって、週に2回だけで、買い物と献立作りは私でしょ。とにかくさ。週末はお互い休めるように気を使い合おうよ。友達呼びたいなら、呼びたい人がご飯は準備すればいいと思う。

ス:でも、これまで、週末に友人を呼んだら一緒に作ってきたじゃない。ケニアにいる時なんて、ヨーコーが「韓国料理を食べましょう!」って友達誘って、私が韓国料理作っていたじゃない。

私:スージン、その時何て言ったか覚えている?「次からヨーコーが呼びたい友達がいたら、ヨーコーが作って」って言っていた。それに、ケニアにいる時は二人とも働いていたわけで状況が違うでしょ。どちらか片方が家事専門になるのは、今が初めてなのだから。

ス:アゼルに来てからだって、友人が来る時は一緒に作っていたでしょ。

私:でも、その時はスージンがロシア語を学んでいなかったし、毎日、新しいメニューの弁当なんて作っていなかったよ。

ス:先月、友人4人が来た時だって一緒に作ったじゃない。

私:だから、今週はちょっと色々あって疲れたわけ。それで、ちょっと愚痴りたかったんだよね。これまでこうしてきたから、こうすべきとか、そういう解決方法を探しているわけでなくてさ。お互い、疲れているなーと感じたら、友達を呼ばずに、外でお茶にするとかさ、色々できるでしょ。

ス:じゃあ、これから、友人を家に招待する時は、その人が料理をするってこと?

私:そういうことがあってもいいじゃないのか、という話。

ス:でも、私の友人はあなたの友人でもあるべきだから、私たちの友人が家に来るなら、一緒に料理すべきよ。それが普通よ。

私:スージンの両親は、一緒に料理するの?

ス:私の両親なんて関係ないでしょ?(義父がガスコンロの火を付けるところを見たことがない)

私:主夫会のメンバーと比べたって、私より家事している人なんていないよ。

ス:男だからって、何が特別なのよ。

私:アゼルにいる主婦の人たちだって、毎日、夫の弁当作っている人なんて、なかなかいないよ。多くの人は、週2−3回、家政婦が来ているし、買い物を運転手に頼んでいる人だっているよ。

ス:今日、友人が来る事は、もう一週間前から話していたことでしょ。

私:でも、その時は、私が作らなきゃいけないなんて思わなかったし。

ス:週末は基本、二人で料理するんだから、同じことじゃない。

私:いや、でも、やっぱり、お客さんが来るのと来ないのでは、全然違うよ。二人だけなら、簡単な食事でもいいけど、お客さんがいたらそうはいかない。

ス:じゃあ、もう、家には誰も呼ばないってこと?

私:だからさ、黒か白かとか、解決策を求めているわけじゃなくてさ。愚痴りたいんだよ。こんなこと愚痴れる人、他にいないんだからさ。韓国語を週4日やりながら、料理、弁当作り、買い物、皿洗いをやり、そして、引っ越しに交通トラブル。今週はとても疲れていて、さあ、土曜日になったと思っても、週末の感じがしない。朝ご飯作って、食べて、皿洗いしたら、今度は、酢豚作って、食べて、友人と話して、皿洗いしたら、午後3時くらいになり、ああ、もうすぐ1日終わっちゃうみたいに感じちゃう。

そんなやりとりをしていたら、もう11時20分。あと40分で、友人が来る時間だ。二人で酢豚作りに取りかかった。私が豚肉を切り、醤油と酒に付けて、片栗粉をまぶし、揚げていき、スージンが野菜を切った。そしたら、スージンの携帯が鳴り、友人が土壇場キャンセルしてきた。あーあ。これ以上、愚痴っても仕方ないから、私は黙って、そのまま作り続け、屋上テラスで酢豚を食べた。カスピ海を眺めながら食べる酢豚は最高に美味しく、「ま、この素晴らしい景色を眺めながら暮らせるなら、少しくらい辛くても頑張ろう!」と思えた。

興味深いのは、いつもは愚痴に共感してほしいスージンに私が解決策を与えようとして、喧嘩していた私たちが、今度は、愚痴に共感してほしい私にスージンが白か黒かの解決策を与えようとして、言い合いになってしまったことだ。ひょっとしたら、これは「男」と「女」の違いというよりも、会社などの組織に属して働いている者とそうでない者の違いなのかもしれない。会社では、「特ダネの数」「七輪の生産量」「従業員数」など、白か黒かの数値で成果が計れるのに対し、家事の成果は数値では計れない。家族が幸せに暮らしているかどうかにのみ、成果を見いだすことができる。(だったら、いつも喧嘩してんじゃねーよ、と言われそうだが、、)

 それにしても、一般の「主婦/主夫」の人たちは、こういうのを当たり前にやっているのかと思うと、本当に頭が下がる。私には子どももいないし、掃除と洗濯は週1回、家政婦さんにやってもらっているにもかかわらず、こんなに大変に感じるのだから。まだまだ一人前にはほど遠いな。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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