今日はこの一年で一番の怒鳴り声を上げてしまった。最初に謝っておく。スージンごめん。
いつもの様に二人で朝ご飯を食べている時、スージンが「グランドマートに行くことがあったら、牛肉買ってきて。今日じゃなくていいから」と頼んできた。私はいつもの様に、「紙に書いておいて」と言い、スージンがメモを残した。私はそれをリュックに入れ、韓国語教室の帰り道、グランドマートに立ち寄った。しかし、スージンが書いた「Bristick」という種類の牛肉がなく、「今日じゃなくてもいい」と言っていたのを思い出し、もう一度、スージンに詳しく説明してもらおうと決め、他の買い物をして立ち去った。
午後6時ごろ、私は、海岸沿いのジョギングから戻り、すでに帰宅していたスージンに「今日は麻婆豆腐をしよう」と言い、私がシャワーを浴びている間、スージンは冷蔵庫から材料を取り出し始めた。
グランドマートから買ってきた野菜や肉やらが冷蔵庫に入っているのを見たスージンは「私が頼んだ牛肉は?」と、バスルームでシャワーを浴びている私に尋ねた。私は「買えなかった」とだけ答えた。
そしたら、スージンは、バスルームの入り口まで来て、頭を洗っている私に質問を始めた。
ス:なんで買えなかったの?書いた紙忘れたんじゃないの?
私:紙を持っていったんだけど、見つからなかったんだ。今日必要じゃないんでしょ?
ス:毎日、グランドマートに行くわけじゃないでしょ?店内に牛の部位が書かれたポスターが貼っていたでしょ?それ見なかった?それを見ればBristickの肉がどれかわかるはずなんだけど。
私:別に今日必要じゃないんでしょ?
ス:ポスターを見たのかどうか聞いているのだけど?
私:見てない。Bristickっていうのがアゼル語だと思って、その表示がある肉を探したけどなかった。
ス:英語だよ。(苦笑いをして立ち去る)
私は、裸で頭を洗いながら、今の会話が頭の中を駆け巡り続け、こみ上げてくる怒りが抑えられなかった。「その肉は今日必要なのか?なんで、そんな文句を今言わなければならないんだ?」と台所にいるスージンに怒鳴った。
そしたら、スージンも負けじと、再び、バスルームの入り口に姿を現した。
ス:何が?ただ、なんで、買えなかったのか聞いただけでしょ?
私:いや、文句を言っていた。ポスターを見たのかどうか、聞く必要がどこにある?買えなかったという事実だけで十分でしょ。今日必要な物じゃないのだから。(声のボリューム上がる)
ス:グランドマートに行ったのに、頼んだ物を買ってもらえなかったから、何故か聞きたかったのよ。(さらに上がる)
私:今日買えとは言わなかった。グランドマートは、韓国語教室からの帰り道にあるから、いつでも立ち寄れると判断し、後日でも大丈夫だと思ったんだ。なんで、大きな声を上げる必要があるんだ?(さらに上がる)
ス:大きな声を上げているのはあなたでしょ。(さらに上がる)
私:いや、あなたが先に上げた。私は最初、「買えなかった」と答えたのに、さらに説明を求めてきた。ポスターを見たのかどうかなんて、全く重要な情報でもないのに。私を責めようとしているとしか思えなかった。(さらに上がる)
ス:あなたはいつもそうやって、、
私:
とにかく、私がシャワーを終わるのを待ってから、話してくれてもいいだろ!!!!!(手でバスタブを「バン」と叩く)
私は完全に感情のコントロールを失っていた。頭にシャンプーをつけながら、怒鳴る私を見て、スージンは哀れみの表情を見せ、その場を立ち去った。
なぜそこまで感情的になったのか理解できるまで時間はあまりかからなかった。シャワーで体を流し、体を拭いた後、ソファに座ってテレビを見ているスージンに「スージン。ちょっと話そう」と英語で歩み寄った。シャワーでは韓国語だったが、真剣な話をする時は英語が一番だ。スージンは、「今、あなたと話したくない」と同じく英語で返し、台所に向かった。私は「大事な話なんだ。ちょっと座ってくれ」と言うが、「私はあなたと話したくないの」と言う。私は「二人で一緒に暮らしているんだから、話し合うという努力を怠れば、暮らし続けることも難しくなるよ。さあ、座って」と言い、スージンは少しためらった後、ソファではなく、少し離れたダイニングテーブルの椅子に座った。
私:ソファーに座ったら?(手招きする)
ス:ここでいい。ここでも聞こえるから。
私:2年くらい前、私がスージンの国連での仕事振りについて「まあ、そんなに焦らなくてもいいんじゃないって他の人は言っているよ」って言ったら、「私は、私の仕事をやっているだけでしょ!」って苛立ったの覚えているかな?人は、自分が真剣にやっている仕事について、周りから非難されたり、尋問されたりすることを嫌う。昨日、スージンが私に「今週は家政婦さん、月曜じゃなくて、水曜に来てもらって」って言った時、私は苛立ったよね?英語を全く話せない家政婦さんに、「明日でなくて水曜に来て」というメッセージを伝えるのがどれだけ大変なことかわかる?私が苛立ったのは、スージンが、私が毎日真剣にこなしている「仕事」に理不尽に口を挟もうとしていると感じたからなんだ。
さっきも全く同じ事だ。毎日の買い物は私の「仕事」だ。いつ、どうやって、どこで買えば、効率よく仕事ができるのかいつも考えてやっている。人に頼まれたものを正確にすべて買いそろえるって、結構難しい。だから、いつもスージンに紙に書いてもらっている。今日だって、その紙を持ってスージンの肉を買おうとしたけど、その名前の肉が見当たらなかったから「今日じゃなくていい」ってスージンが言っていたから、後日にしようと判断した。
それなのに、スージンは、私がシャワーを浴びている時に色々質問をしてきた。なんで、私が裸で、自分の股間を洗っている時に、頼まれた牛肉を買えなかったのか説明しなければならないのか。スージンの声のボリュームは明らかに必要以上に大きかったから、私は非難されているように感じた。
私がスージンの難民に対する接し方に関して、とやかく言ったら、スージンは怒ると思う。それと同じで、「主夫」である私にとって、買い物や家政婦の監督は「仕事」なんだ。家政婦なんて、毎回、電話しても来ないことがあるし、頼んだ事を忘れることなんて日常茶飯事だ。色々大変なことがあるなかでも、自分なりに頑張ってやっている。だから、スージンには、私が「仕事」としてやっていることに疑問を投げかける時は、それなりの配慮が必要だということをわかってもらいたいんだ。
ス:あなたの「仕事」がどうこうというよりも、私が頼んだ事を、あなたがしなかったのだから、それについて尋ねるのは当然でしょ?
私:でも、スージンが「頼んだこと」を「私がしていない」というのは間違っているでしょ。スージンは「今日までに牛肉を買って」とは言っていないよね?「今日じゃなくてもいい」と言った。だから、私は今週のいつか買えばいいと思った。もし、今日までだったら、スージンに電話してでも、今日、買いそろえようとしたはずだ。
ス:、、、、、。
スージンはいまにも泣きそうな表情だったため、私は、スージンの方に歩み寄り、「スーージーーン、そんな悲しい顔しないでよー」といつもの、日本語の甘えん坊口調に切り替えた。スージンはソファに座り「ものすごい大きな声出されて本当に怖かった。もし、私が近くにいたら殴られていたんじゃないかと思うくらい。このままいったら、5年後には暴力振るい始めるんじゃないの?」と震えた声で話した。
私はスージンを抱きしめ「ごめんねー。大きな声出して。スージンみたいな可愛い顔を殴れるわけがないでしょ?」と宥めた。スージンは「今日は女性に対する暴力没滅の日で、国連が記念イベントやった日なのよ。そんな日にあんなに怒鳴られるなんて、、、」と冗談っぽく言った。
それから、私はお茶を入れ、屋上テラスに上がって、夜景を眺めながら、スージンに「今日の議論についてはどう思った?」と改めて尋ねた。スージンが何故、あんな行為に出たのか知りたかったのだ。
ス:色々思う所はあるけど、言ったら喧嘩になるから言わない。
私:なになに。言ってみてよ。
ス:うーん。なんかとても小さいことを大きくしているような気がして。確かに、シャワー中にしなくても良かったかもしれないけど、それはそんなに大きな事じゃないでしょ。私が「ここでなく、こちらで買い物をしたら」って言えば、それはヨーコーの仕事への干渉になるかもしれないけど、私は、ただ、頼んだ事がなされていなかったから、その理由を聞きたかっただけなのよ。
私:でも、さっきも言ったけど、「今日まで」とは頼んでないでしょ?
ス:でもさあ、グランドマートに行ったら買っておいてと言ったものがあって、今日、グランドマートに行ったのに、買われてなかったら、「なんで?」って思うでしょ。何が原因なのか知りたいし、原因がわからないと、次、ヨーコーが行っても、買えないかもしれないでしょ。
私:原因を探ることは全く問題じゃないんだ。問題なのは、その「マナー」なんだ。何も、私がちんちん洗っている時に、スーパーの店内のポスターを見たのかどうかまで説明を求めなくてもいいと思うんだ。こうして二人で座っている時に、スージンが書いてくれた紙を見ながら、話し合えば良かったんじゃないかな。
ス:でも、シャワー中に質問したというのは、一つの要因であって、ヨーコーが単に、批判されたくなかったから苛立ったというのもあるんじゃないの?ヨーコーが私に、「このデパートに行くことがあったら、これ買っておいて」ってお願いして、私がデパートに行ったのに買わなかったら、同じ様に尋ねるでしょ?
私:スージンがお風呂に入っているときには尋ねないよ。
ス:でも尋ねるでしょ。アフリカにいる時だって、私に色々頼んでいたけど、必ず「なぜやらなかったんだ?」って尋ねていたじゃない。
私:うーん。スージンが「主婦」になったことがないから、私の気持ちがわからないんだと思うんだ。「主夫」っていう仕事は、とても不規則なものだから、やらなければいけない仕事をできるだけ効率的にこなして、自分の時間をできるだけ多く確保しようと努力するんだ。だから、「スーパーで特定の牛肉を買う」という業務を、いつ、どこで、どうやってするのかじっくり考えるんだ。韓国語教室に行ったついでにやろうとかね。そういったプロセスの一環にあるということを理解しないと、なぜ、私が怒ったのかは理解できないと思う。
スージンにとっては難民支援が仕事。私にとっては家事が仕事。お互いの「仕事」が何なのか考え、それについての失敗を指摘する時は、お互いの気持ちに最大限配慮してやらなければならない。今日、スージンが冷蔵庫を開けた時、私がグランドマートに行ったのに、頼んだ牛肉を買ってないことに気付いたら「何かしらの行き違いがあったんだな」と悟って、シャワーを浴びている時に問いつめるのではなく、二人でゆっくり話している時に、「私の書き方に問題でもあったのかな?」みたいなアプローチにできないかな?
ス:なんか、最近のヨーコーって凄く敏感。家政婦のことだって、今週土曜日にホームパーティやるから、月曜でなく、水曜か金曜に変えようって言っただけじゃない。アフリカにいる時は、よくやっていたことなのに、今はとても敏感に反応するね。
私:アフリカの時は英語が通じたからね。英語が話せない家政婦の指導/監督がどれだけ大変なことかスージンが知らないで言っていると思ったから、感情的になったんだよ。
ス:それに、ヨーコーが記者やってたころ、私は大学院の夏休み中、一緒に暮らして毎日料理してたけど、私はそんなに敏感にならなかったけどな。
私:スージンが大学院の夏休み中に、私の家に住み込んで料理するのと、私がキャリアを途中でストップして、アゼルバイジャンで1年主夫やるのと、同じにしてもらったら困るよ。
ス:確かに同じではないけど、なんか、ヨーコーは主夫に向いてないんじゃないかなーと思って。小さいことですごいピリピリしている感じがする。ストレスになっているんじゃないかって、心配。
私:主夫に向いてないならどうするの?
ス:仕事したら?
私:仕事できてたらとっくにしているよ。言語の壁とかビザの問題でできないから、主夫やっているんでしょ。それとも、スージンが仕事しながら、料理もやってくれるの?
ス:、、、、、。
私:そりゃ、私が少し敏感になっているのは認めるよ。あんなに大きな声出したのも悪かったと思っている。でも、私たち夫婦が一緒にいるためには、どちらか片方がキャリアと妥協するしかないって決めたじゃない。キャリアと妥協して家事を毎日やるということが、そんなにスムーズにいくと思った?じゃあ、私が仕事をして、スージンが「主婦」になったら、問題なくスムーズにいくと思う?違うでしょ?私には少なくとも、「執筆」っていう趣味があるから、仕事なくても、暇にならないけど、スージンはそういうのないでしょ?今まで仕事なしの生活したことないでしょ?もしかしたら、私よりストレス抱えるかもしれないよ。
「主夫」の仕事の辛い所ってさ、仕事のミスを指摘される機会は山ほどあるのに、相手の仕事のミスを指摘することってできないんだよな。私がスージンが国連でどんな仕事をしているか観察することはできないけど、スージンは私がどんな主夫業をしているのかは日々見る事ができるもんね。だから、とても不公平なんだよ。だから、褒めれる所はできるだけ褒めてくれよ。
ス:ヨーコーはよくやってくれていると思うよ。
私:そう?じゃあ、これからも頑張るよー。
ス:牛肉買ってきてくれたら、「ユッケジャン」(韓国料理)作ろうねー。
私:今日の喧嘩の話、ブログに書いてもいい?
ス:いつもそんなこと聞かずに書いているでしょ!
こんだけプライベートばらされても大丈夫な妻も珍しいだろう。本当に私は幸せな人間だ。
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