「避難者」か、それとも『避難民」か?

仙台防災会議まで残りわずか。4年前の津波で、避難所の運営などで協力しあった被災者の姿が世界のメディアで取り上げられたことは記憶に新しい。そのことを文章にしていたら、ある単語をタイプする際、妙に居心地が悪くなった。

その単語とは英語で「Displaced Persons」。災害や紛争で家を失い、避難した人たちのことを指す。UNHCRでは、避難先が国内の場合「国内避難民」と言い、国外へ出た場合「難民」と言う。(厳密に言うと、自然災害の場合は「難民」にはならない)

津波で被災した人の避難先はほとんど国内だから、「避難民」である。しかし、「津波の後、避難民が助け合った姿が世界の注目を浴びた」と日本語にすると、どうも、しっくりこない。

なぜだ?試しに、辞書で「Displaced persons」と引くと、やっぱり「避難民」と出る。

でも、やっぱり『避難民』と書けない。普段、慣れているはずの単語が、日本国内で適用することができない。なぜだ?ああ、もどかしい!

仕方ないから、日本の新聞ではどんな表記が使われているのか、調べてみた。そしたら、「避難者」とある。「避難者」だと、どこか短期的に避難しているようにも聞こえなくもないが、「避難民」よりは、なぜかしっくりくる。

外国の人を「避難民」と記すのに躊躇しない私が、日本人の場合は、躊躇してしまう。

試しに、某全国新聞のウェブサイトで「福島」「シリア」と「避難民」「避難者」をそれぞれペアで検索してみた。


結果を見て、私は言葉を失った。

「シリア」と「避難民」を組み合わせた記事は188件検索された一方、「シリア」と「避難者」は18件。

「福島」と「避難民」は39件だったのに対し、「福島」と「避難者」はなんと637件もの記事が検索された。

シリア内戦は、福島の原発事故の約2ヶ月前に始まった。つまり、シリアの避難民も、福島の避難者も、約4年間の避難生活を強いられているという意味では、同じ「避難者」である。

なぜ、こうなるのか?私が考えうる答えは一つ。「○○民」という言葉には、どこか蔑視なニュアンスがある。Googleで「避難民」と検索すると、福島の避難者がどれだけ賠償金をもらっているかなどの批判記事が多く出てくるのに対し、「避難者」と検索すると、復興庁のページなど、より中立的なものが多くなる。

外国のことなら「○○族」と平気で表記できても、沖縄の人を「琉球族」とは表記できないのに似ているのではないか。

日本は現在、23万人の国内避難民を抱えている。先進国でこれだけの国内避難民を抱えている国は他にない(はずだ)。

4年前の津波と原発事故は、世界で紛争や災害から家を追われた5000万人の「避難者」と、日本が大きな共感の輪で結ばれる絶好の機会だった。

 その絶好の機会が、私たちの中に潜在する「○○民」に対する蔑視意識によって失われたのだとしたら、とても残念である。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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