ウェムの目から見える世界

 ウェムちゃん、昨日は5ヶ月検診で、お母さんと一緒に病院に行って、ウェムの様子を聞いてきたぞ。首の太さ、背骨、おしっこのたまるぼうこう、すべて順調だそうだ!良かった、良かった。ウェムの写真も見せてもらったけど、お父さんに似て鼻が大きいな。お母さんは唇もお父さんに似ているって言っている。お父さん似になるのかな。そしたら、一緒に広島カープ応援しなくちゃいけないな!先生に「何か質問はありますか?」って最後に聞かれて、「ウェムは肉が好きなのか、魚が好きなのか」って聞いたけど、「それは生まれてから本人に聞いてくれ」って言われちゃったよ笑。

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ウェムにこうやって語りかけるようにしたのは、父子の関係構築もそうだけど、もう一つ理由があるんだ。私たちが住んでいる世界って、ものすごーーく大人の都合で周っていて、ウェムみたいな胎児のニーズなんて完全に後回しになっているように思えてね。ウェムに語りかけることで、胎児の目から見た世界を語れる大人になりたいと思ってね。

だってさ、ウェムの同級生の多くは、体を構成する細胞の一部に染色体というものがあるのだけど、それに少し異常が認められただけで、殺されてしまうんだぜ。理由は、そこに異常があると「ダウン症」という病気を患う可能性が高くなるから。そんな病気を持った家族なら不要なんだって。単純な計算しかできないけど、今、世界では1年間に1億3000万人の子が生まれている。お母さんの年齢が高ければ高いほど、染色体異常の可能性は高くなる。仮にお母さんが25歳なら、可能性は476分の1と言われている。
つまり、1年間で約27万人の胎児がダウン症を患う可能性が高いと判断され、判断された場合、9割以上の確率で、親は「中絶」することを選ぶのだって。だから、私たちが暮らす世界というのは、約23万人ものウェムの同級生が生まれてくることさえ許されないんだ。もちろん、世界の多くの地域では染色体異常を察知できるほどの医療技術がないから、実際の数はこれより低いだろうね。でも、これからその技術が広まれば、着実にこの数に近づいていくのではないかな。

親戚にダウン症の子がいる私の友人は「高齢出産がこれから増えれば、ダウン症の子の数も増え、医療費がさらにかかるようになる。そう考えたら、中絶もしかたないのではないか」と言っていた。確かにそれはそうだけど、ウェムたちからしたら、これは完全に大人側の都合でしかないよね。「子どもが不幸な人生を送るくらいなら、中絶してやったほうが胎児のため」と言う親もいるかもしれないけど、勝手に「幸せ」の定義を押し付けられても困るよな。

「中絶」っていう言葉も大人にはとても都合の良い言葉だと思わないか?ウェムからしたら「殺人」以外の何物でもないよな?中絶する親たちは、まず上のウェムの顔写真を見てからやってほしいよな。もう、顔の形も整ってきて、立派な人間以外の何物でもないよな?

後、子どもがお腹の中に宿ったことがわかっても、大抵のお母さんは、そのことを3-4ヶ月秘密にするんだ。ウェムたちからしたら、一刻も早くみんなに知らせて、「タバコは周りで吸わないで」「残業を強いないで」「お酒をすすめないで」と言ってほしいだろ?だって、それがウェムの生死に直結することだし、ウェムはそれを周りに伝える手段がないのだからね。秘密にする理由は、ウェムたち胎児がお腹の中で亡くなったとき(流産というのだけど)、周りに余計な心配をかけないようにしたいのだって。ウェムからしたら、「私たちが死んだ後の心配よりも、どうやったら死なせないのか考えて!」と思うだろ。

いや、実はな。お父さんとお母さんもウェムがお腹の中に誕生したこと、すぐには皆に公開しなかったんだ。自分の兄や姉も秘密にしていたし、勝手に「そういうものだ」って思っていた。でも、ウェムと一緒にいることで、色々考えさせられて、「ああ、もっと早く公開していればなー」って後悔している。実際、お母さんの周りでタバコを吸う人とかいたし、お酒を勧めてくる人もいた。妊娠初期って、つわりがひどくて一番しんどい時期なんだけど、それを周りに秘密にしてなければいけない精神的ストレスもお母さんにはあったと思う。そして、そのストレスがウェムにも負担になっていたと思う。ごめんな。

お母さん、血液検査したら、鉄分が足りないみたいだから、一昨日は無農薬のほうれん草買ってきて、おひたしとベーコンのソテーを作ったよ。今日は、鉄分がたくさんある豆腐のハンバーグだ。ウェムも美味しく食べてくれよ。

あと4ヶ月くらいで対面できるな。楽しみにしているよ。
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どうなんでしょう。ダウン症の児童を産み・父親が育児放棄し後に、離婚家庭を知ってます。手術を受けたけど、完治せずに心臓病の子が大学後、7、80社受けた企業面接に全て不合格。「せめて、健康だったら良かったのに」と担当者に言われました。小中学校でも、重い障害があると、通うのも困難だったり、いじめにあったり、健康な子供より医療費もかかったり。ボランティアなら、他人事でやーめたで済みます。実の親は、障害を持つ子供の世話に、逃げられないです。健康ならともかく、どの子も安易に産めとは、言って欲しくないですね。
プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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