初めての合同会議(2)

 グループ討論では、34人の従業員を6つのグループに分け、各グループに一つの質問を振り分け、10分で討論し、発表してもらった。グループ分けは、まずエチオピア人2人はソマリア語ができないため、英語ができるソマリア人従業員3人と一緒にグループにさせた。後は、適当に各従業員に番号を振り分けた。女性と男性を混合にするかどうか迷ったが、とりあえず、初めは混合でやってみて、どうなるか探ることにした。

 番号を振り分けた後、各グループが集まる場所を大きな声で指示しても、なかなか動かない。通訳がうまく伝えきれていないのか、こういった集団行動に慣れていないのか。私が1人1人に「君はそこ」「あなたはあそこ」と指で指示して上げないと動けない従業員が何人もいた。しかも、私が指示を出している間、私語がやむことはない!何度も「人が話している時は、私語は慎んで!」と言っても、全く効果がないのだ。

 討論の質問は全部で四つ。前の晩に友人らと一生懸命考えた、とっておきの質問だった。

① 難民の女性にコンロを配ったが、彼女は私たちのコンロは使おうとせず、従来通りの焚火で料理をしています。彼女に何と忠告しますか?

 二つのグループがこの質問に答えた。発表はシミュレーション方式で、難民女性の役を誰かにやってもらい、彼女に話しかける様に発表してもらった。

一つ目のグループ、「コンロを使えば、使用する量の木々を減らすことができますよ」

二つ目のグループは、「ほら、コンロなしで料理すると、風が吹いて、たくさんの木々を使うでしょう。私たちのコンロを使えば、木の量を10分の1に減らすことができますよ」

 ここで、私は、全員に「どちらの答えが良かったか?」と尋ねた。工場Aの主任ラホが真っ先に手を挙げ、「二つ目が良かった。風の話など、具体的だった」と言った。私は「そうですね。具体的な説明があると、難民の人たちも理解できます。でも、二つ目のグループは、コンロを使うと木の量を10分の1に減らすことができると言いましたが、それは間違いです。本当の数値を知っていますか?」

 この質問には誰も正確に答えることができなかった。皆、7~8割の薪の量を減らすことができると思っていた。私が「コンロが適切に使われた場合、3割の薪の量を減らすことができます」と伝えると、皆、納得いかない様子だった。一体、これまで、従業員たちはどんな教育を受けてきたのか、私の疑問は深まるばかりだった。

 私は、「あなたたちが祖国へ戻った時、自分たちの『コンロ工場』を経営してもらうことが私の夢です。もし、あなたが工場を経営するなら、コンロを誰かに買ってもらわなければなりません。皆さんの中には家畜を飼育していた人が多いですが、家畜も人に買ってもらわなければならない。でも、他にも同じ家畜を売る人がいた場合、あなたはどうやって自分の家畜を買ってもらうようお客を説得しますか?」

 工場Bの主任アデンは「その家畜がどれだけ太っているとか、何歳とか、家畜について良い点を買い手に話します」と言った。

 私は「そうです。コンロも同じことです。もし、あなたたちがコンロを売らなければならないのなら、そのコンロについて知識を持っていなければ、売り込むことはできない。だから、皆さんがコンロについて知ることは大事なことなのです」

 皆、納得してくれているようだった。彼らは今、支援で成り立つ工場で働いているため、コンロについて知識がなくても、彼らの生活が脅かされることはない。私たちNGOがこれまで彼らに教育してこなかったのは、確かに悪いが、しかし、彼ら自身も、自分たちがコンロについて知識がないということは自覚しているはずなのに、それについて何もしようとしなかったことは大きな問題である。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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