初めての合同会議(3)

第二の質問は、

「ライフラインは新しい従業員を1人必要としています。10万人いる難民から、どういった基準でその人を選びますか?」

 この質問も二つのグループが解答した。

 一つ目のグループは、「社会的弱者を選びます。夫がいない女性など、生活支援を必要としている人」

 二つ目のグループは、「コンロ作りは技能が必要ですから、あらかじめ経験があって、NGOで働いたことがある人」

と、うまい具合に意見が分かれた。私は早速、「皆さんはどう思いますか?」と全員に尋ねた。そしたら、「社会的弱者の方が、一生懸命働いてくれる」という意見や、「両方のグループが必要だと思います」という意見もあった。

 私は「確かに両方のグループがあった方がいいですね。一つ、皆さんに聞きますが、コンロ作りの仕事というのは『特別な技能』が必要なのでしょうか?それとも、簡単に学べるのでしょうか?」

 そしたら、「簡単に学べる」という声が上がった。実際、従業員のほとんどは誰一人としてコンロ作りの経験がなかった。

 私は「そうです。簡単に学べるのです。就職口が限られたこの難民キャンプで、25以上あるNGOは、難民にとって最大の就職口です。でも、その大部分は文字の読み書きを必要とする職です。例えば、今ここにいる通訳のハサンは大学まで卒業して、CAREというNGOで働いている。こういったNGOが、いくら社会的弱者を雇おうと思っても、なかなか難しいです。その面、ライフラインはそれができる、という強みを忘れないでください」


 第三の質問は「ライフラインについて全く知らない難民に、ライフラインについて簡単に説明してください」

 これは一つのグループが解答した。「他のNGOと同じように難民を支援するNGOで、コンロを作って、配布しています。ソマリア人、エチオピア人、そして日本人のスタッフがいます」

 私は、「日本人」という単語が出たことに嬉しくなり、思わず発表者のハサンに「ありがとう」と肩を抱き寄せた。そしたら、周りから拍手が沸き起こった。

 そして、「ここ最近、日本、アメリカ、インドなどのジャーナリストが工場を訪れました。そして、皆、この『工場はすごい』と言っていました。それは、ライフラインは、他のNGOにはないところがあるからです。それは何でしょう?」と尋ねた。

 この質問に関しては、誰も、口を開くことができなかった。内部者にとってはあまりにも日常的なことで、外からの目で気づくことも、気づかないことはよくある。

 私は「ライフラインの従業員は全員で何人?」と尋ね「35人」という答えが来た。そして、「その内、難民は何人ですか?」と尋ねると、「34人」と答えがきた。「つまり、従業員のほぼ全員が難民ですね。そんなNGOは他にあるでしょうか?」と尋ねると、従業員たちは「ありません」とはっきりと答えた。

 「ジャーナリストたちが最も感銘を受けた点は、仕事のほぼすべてを難民自身がやっているということです。一番大きなNGOのCAREは2000人の難民スタッフがいますが、それに対して300人ものケニア人スタッフがいます。難民スタッフの比重の大きさでライフラインに勝てるNGOはありません」

 従業員たちは深く頷いていた。私は、彼らがどれだけこのキャンプにとって特別な存在なのかを知ってもらいたかった。彼らがやろうとしていることは、キャンプにある「支援依存症」からの脱却を図るためにも、他のNGOにとって模範になりえるということを。そして、私の役目は1人でも多くの人に彼らの存在を知らせることなのだ。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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