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世界のIKEAに意見を述べる

 世界最大の家具チェーン「IKEA」が、ダダーブ難民キャンプ支援のため、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に6200万ドル(約48億円)寄付することになった。一企業がUNHCRに寄付する額としては、これまでで最高額。さすがは世界のIKEA。恐るべし。日本の企業もこれくらいやってくれたらな、、、。

 10月11日、IKEAのCSR部門にあたる「IKEA Foundation」の代表と、各NGOの代表とのミーティングがあった。私も、弱小NGOではあるが、正規従業員が私しかいないため、ライフラインの「代表」として、他の国連機関、CAREやOXFAMなどの大きい組織の事務所長たちと一緒に会議に出席させてもらった。

今年の飢饉で、当初9万人のために作られた三つのキャンプに、40万人以上が暮らすことになったため、UNHCRは新たに三つのキャンプを開き、現在、難民の移住が進んでいる。IKEAの資金は、主にその内の一つのキャンプに充てられ、3年越しの計画を立てて、キャンプ作りを支援するという。

額が額なだけに、40人ほど集まった会議室は、いつもとは違う熱気があった。UNHCRからは、ダダーブの事務所長は勿論、ナイロビの所長、そしてスイス・ジュネーブの本部から数人来ている。IKEA Foundationの代表、ヘゲンスさんは、「20年も支援を受けることに慣れきった難民の人たちが、少しでも自律できるような支援をしたい」と、私がこの1年半、ずっと考えて来たことを単刀直入に話した。「私たちは、彼らが自分たちの手で自分たちを世話できるようになれるような支援をしたい」という。まさしく、ライフラインの哲学と同じだ。ヘゲンスさんは、一通りの考えを述べた後、「それでは、皆さんの意見をお聞かせください」とNGO側に耳を傾けた。

各NGOの代表たちは、教育、食糧、保健衛生、若者の支援、ケニア政府との関係など、色々な方面から興味深い意見をたくさん述べていた。1時間、2時間と時間が過ぎ、大体ほとんどの人が手を挙げて話をした。ヘゲンスさんは、1人1人の話にじっくり聞き入り、メモを熱心にとり、聞き終わった後は、ジョークを交えたりして、感謝の意を表していた。

こういう機会に、ライフラインの存在も示さなければ。私も、頭の中で自分が言いたいことはあったが、さすがにVIPと大先輩たちを前に緊張し、心拍数が上がった。でも、こういう場で自分の意見が発表できるようにならなければ、いつまでも「工場長」の成長はない。ちょっとくらい的外れなこと言っても、皆、優しい人たちだ。「彼は若いから、仕方ない」と言ってくれるだろう。

1人の発表が終わった後、思い切って手を挙げたら、ヘゲンスさんは笑顔で「ライフライン」と、私のTシャツに書かれた文字を音読してくれた。私は嬉しくなって立ち上がり、

「International Lifeline Fundのヨーコーと申します。私たちは二つのキャンプで毎月1000個のコンロを作って配布しています。36人の従業員がいますが、内訳は日本人が1人で、残りの35人はすべて難民です。8割が文字の読み書きができず、高齢者、障害者、家庭内暴力の被害者、セックスワーカーなどがいます。私はいつも、『あなたたちが将来のソマリアの環境問題のリーダーにならなければいけない」と激励しています。

私はこの仕事を今年5月からしています。私がこのNGOに入ったのは、昨年1年間、UNHCRで働いた時に、自分がやっていることに自信が持てなかったからです。私は、今年3月までUNHCRのダダーブ事務所で若者支援担当をしていました。スピーチコンテスト、ユースフェスティバルなどを催し、他のNGOがやっている音楽大会、演劇大会や様々な職業訓練を観察しました。でも、不思議なことに、そういう会場に行くたびに、なぜか、いつも同じ若者を見るのです。キャンプには10万人以上の若者がいるのに、いつも同じ若者ばかりに会うのはおかしいと思い、今年2月、私たちは若者の実態調査をやりました。18歳から35歳までの男女1300人にアンケートを配ったのです。

結果は驚くべきものでした。まず、キャンプの中には大きな格差がありました。20パーセントが高等学校を卒業し、英語、スワヒリ語を操り、NGOで働いている一方、20パーセントは文字の読み書きすらできない。驚きはそれだけではありませんでした。質問事項の一つに、「NGOや国連の訓練や研修を受けたことがあるか?」というのがありました。高等学校卒業者の9割が「Yes」と答えたのに対し、文字の読み書きができない人に限れば、たったの1割でした。私たちが若者に向けて行ってきた支援が、特定の若者にしか届いていないことがわかったのです。しかも、その特定の若者というのは、一番支援を必要としていない、エリート層の若者だったのです。

もし、これから新しいキャンプの人たちの自律支援をするなら、私の工場で働いている様な、支援の枠から外された若者たちを取り込むことが必要なのではないでしょうか?」

最後に私が「ありがとうございました」と頭を下げると、何人かの出席者が拍手をしてくれた。これまでの人の発表では拍手などなかったのに。私は発表の仕方が下手というか、場に応じた適合能力がないのか、なぜかいつも選挙の街頭演説みたいになってしまう。だから、他の出席者も「拍手でもしてやらないと」という気になったのだろう。恥ずかしい。ヘゲンスさんは笑顔で「色々、考えることを与えてくれてありがとう」と頷きながら返答してくれた。

その晩はヘゲンスさんたちを囲む晩さん会で、ヘゲンスさんに改めて名刺を差し出したら、「ああ、君か。もう、ライフラインは忘れないよ。次来ることがあったら、工場を見せてくれ」と言ってくれた。他のNGOの代表たちも「君は将来日本の首相になるのかな?」「私もライフラインに入りたい」とからかってきた。まあ、とりあえず、ライフラインの知名度が少し上がったことは間違いなさそうだ。ああ、緊張した。
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seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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