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すべてが変わる日


 自分の中の「ダダーブ」が「やりがいある活動場所」から、「恐ろしい場所」へと急変した。

13日午後1時20分ごろ、ダダーブ難民キャンプで活動するNGO「国境なき医師団」の診療所が5人の武装集団に襲われ、スペイン人女性2人が誘拐され、ケニア人運転手1人が銃で撃たれ、重傷を負った。世界最大の難民キャンプでの悲劇に、BBCやアルジャジーラなど大手メディアは、トップニュースで報じているが、日本ではなぜか、あまり騒がれていない。

国境なき医師団職員は全員、活動を中断しナイロビへ一時退避。他の国連やNGOも、特別な事情がない限り、キャンプへの移動を制限するという。

ここ2カ月で、ソマリアに近いケニアのリゾート島でフランス人やイギリス人旅行者が誘拐された。そして、ダダーブでもNGOの車がハイジャックされ、運転手ごとソマリアへ連れて行かれた。治安が悪くなっていることはわかっていた。でも、今回の事件は、あきらかに、外国人の援助関係者を狙ったもので、旅行者や車が狙われたこれまでのとは違う。つまり、私が誘拐されていても、全くおかしくなかったのだ。

私は、これまで、ソマリア人武装集団は、とても「実用的」な所があり、「援助関係者を狙うことはないだろう」と思っていた。人口45万人のダダーブは今やケニア第三の都市規模で、ソマリア全体の人口が800万人といわれているから、その約7パーセントを抱えていることになる。ビジネスが得意なソマリア人はダダーブでも、とてつもない規模の経済活動を行っており、武装集団だって、その経済活動に資金を依存している部分はあるはずだ。そして、ダダーブの経済活動を下で支えているのは、他でもない様々な福祉・教育サービスを無料で提供している25以上の援助団体。5000人以上の難民の就職口にもなっている。つまり、援助団体関係者を襲撃し、彼らが活動を中断した場合、一番の不利益を被るのは、他でもないソマリア人自身なのだ。

これまで、ソマリア南部を実効支配しているイスラム急進派組織「アルシャバーブ」が外国でテロ事件を行ったのは、昨年7月のウガンダ首都カンパラ。自爆テロで70人以上が犠牲になった。ソマリアからより近いケニアでなく、ウガンダで行ったのは、ウガンダならソマリア人人口が少なく、彼らの経済活動に支障が出ないからだと指摘する専門家もいた。

ソマリア難民キャンプで働いているというと、「怖くないですか」と良く聞かれる。これまでは、上記の事を考えながら、「そんなに怖くないし、怖い目に遭ったこともないですよ」と言ってきた。でも、今は、正直「怖い」。私の工場は難民キャンプの心臓部に位置し、鍵のかかったゲートはあるにせよ、5人の武装集団が来たら、ひとたまりもないだろう。他のNGOも活動中止を考えているという。私も、本部と話し、これからのことを考えなくてはいけない。

しかし、ウガンダのテロでは、アルシャバーブは翌日犯行声明を出したのに、今回は出していない。ダダーブでの緊急会議でも、5人がアルシャバーブメンバーだという話は一切なかった。でも、ケニア政府は「アルシャバーブの犯行」と発表し、メディアもそれをそのまま引用している。BBCは、アルシャバーブの関係者の話として、「私たちはやっていない」と報じた。5人の武装集団がアルシャバーブの一員と断定できる物は何もない。彼らが、アルシャバーブのユニフォームでも着ていない限り無理だ。

それでも、ケニア政府は「アルシャバーブ」と関連付けたい。なぜなら、欧米諸国から「テロ集団」と言われる「アルシャバーブ」の犯行にすれば、「難民キャンプがテロの温床」と宣伝でき、欧米諸国から支援を受けられるだろうし、彼らにとって邪魔な難民キャンプを一日も早く閉鎖できるからだろう。

わからないことは、「わからない」と言うこと。それは、正確な報道をする原点だと思っている。誘拐された2人の女性の運命が、誰かの政治目的に利用されるなら、それは新たな悲劇としかいいようがない。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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