難民リーダーに支援を -朝日新聞朝刊10月22日、「私の視点」掲載されました

私の視点
 アフリカ東部のソマリアは20年余りも続く内戦で無政府状態にあるうえ、「過去60年間で最悪」ともいわれる大干ばつに見舞われた。国連によると、全人口約1千万人の3分の1以上が飢餓などによる生命の危険に直面している。昨年3月以来、私が「ILF」のスタッフとして活動する隣国ケニアのダダーブ難民キャンプには、毎日平均1千人を超す難民がソマリアから逃れてきている。
 未曽有の大震災に襲われた日本からすれば「遠い大陸の心配をしている場合か」という人がいるかもしれない。だが私はあえて、こういう時にあっても日本に救済支援の力を発揮してほしいと願う。
 ダダーブ・キャンプは20年前に設けられ、現在44万人余りの難民が暮らす。このうち、16万人が今年になって流入してきた。
 赤道直下に近い乾燥地帯をひと月も歩いてキャンプにたどりついた20代の男性は途中、5人の子どもを栄養失調で亡くした。9月初旬にはキャンプで麻疹が流行し、妻も失った。「出身の村ではここ3年間、ほとんど雨が降らず家畜が次々に死んでいった」と嘆く。だが、内戦下でソマリア南部を実効支配する急進派イスラム武装組織が村人の移動を制限し、外国の援助団体の支援を拒んでいたため、逃げることも支援を受けることもできなかったという。
 キャンプには、高等教育を受けて英語や現地のスワヒリ語、アラビア語を話し、欧米系NGOで子どもの教育支援などで活動する難民も少なくない。彼らは今回の飢餓で「共同体緊急援助チーム」を結成し、キャンプ内だけでなくケニア内外で暮らすソマリア人から資金を募り、粉ミルクやビスケット、毛布などを購入し援助が必要な人たちに配布している。私が働くILFは、ダダーブ・キャンプで難民たちが料理で使うかまどを製造し無料で配っている。私以外のスタッフ30人は全員が難民だ。
 しかし、こうした「難民リーダー」たちがキャンプ全体の支援のあり方を提言する機会は乏しい。日本や欧米諸国の政府高官らがダダーブを視察に訪れても、難民リーダーらと面会することは滅多にない。国連主導でダダーブで毎週開催される緊急支援会議などに招待されることもない。
 難民リーダーたちは、いずれ内戦後のソマリア再建を担うことになろう。将来に向け、今こそ彼らの潜在能力を十分に引き出せるような支援の枠組みを作れないか。日本は、国連の主要な資金拠出国として、また幾多の災害を乗り越えてきた国として、そのノウハウと人材などさまざまな分野で支援の手をさしのべてほしい。
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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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