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非組織人を「組織人」にするには

私は、新聞社、国連と、これまで大きな組織で働いてきたが、生まれつき自分勝手な性格で、なかなか組織の一部になりきることができなかった。(というか、一部になりたくなかった)私と従業員の間に、何か共通点があるとしたら、この「組織の一部になりきれない」という部分に尽きる。しかも彼らは私のレベルのはるか上をいっている。

 私の場合、平日午後10時に10年上の先輩が一生懸命仕事している時、ソファーで横になるとか、大きなイベント準備で皆が忙しくしている時、先輩に相談せず、勝手にイベントとは関係のない仕事のアポを取るとかのレベルだった。

 私の従業員たちは、もっとすごい。

 10月初旬、「レンガの運搬を手伝ってくれ」と従業員の1人にお願いしたら、「マヤ!(ソマリア語でNO)」と言われた。「レンガ作りに忙しいから」というのが理由。
 同じ時期、3人の男性従業員が仕事を3日間、ボイコットした。後で理由を聞くと、「俺たちは仕事を頑張っているのに、誰も認めてくれない」という言い分だった。
 コンロがしっかり使われているかどうかの調査を任されて、帰って来た従業員が「今日はもう疲れた」と言って、まだ就業時間中なのに、何もしないで休んでいた。「時間はまだあるからコンロ作りをして」と頼んでも、「俺の今日の仕事は調査をすることです」と主張してきた。
 就業時間は午後1時までなのに、正午には着がえをして休んでいる。

 元犯罪者が、どうすれば犯罪を防止できるかアドバイスできるのと同じように、非組織人の私が、他の非組織人である従業員を、どうすれば「組織人」にできるか、良く分かっているつもりだ。
 就業規則を作り、それにサインさせ、罰則規定を確立する。抵抗はあるだろうが、工場が組織として成り立たなくてはならない以上、少しの痛みは伴わなくてはならない。

私は他のNGOの人事担当を訪れ、どんな就業規則を使っているのか教えてもらい、参考にした。それをもとに、就業時間、休暇、賃金、そして「上司の指示に従う」「就業時間内、10分休憩は取っても良いが、それ以外の時間は仕事をする」など約20の規則を作り、「契約書」を作った。

しかし、従業員の8割は文字の読み書きができない。そこで、私はまず、新しいアシスタントのモウリドに英語をソマリア語に訳してもらい、そのコピーを人数分印刷した。そして、従業員全員を集め、3時間かけて、契約書に書かれていることを口頭で説明した。そして、「ソマリア語で書かれたものを、文字の読み書きができる親戚や友人に見せ、何度も読んでもらい、頭の中に記憶してください」と頼んだ。

ミーティングでは予想通り、「就業時間の徹底」と「上司の指示に従う」という部分で、従業員たちとやり合った。

私が、「就業時間は午前8時から午後1時までの5時間です。主任は、従業員全員がこの時間内ずっと働けるよう、仕事をしっかり振り分けてください。もし、午後12時半に私かモウリドが工場を訪れ、皆が仕事をしていなかった場合、指示を出さなかった主任か、指示に従わなかった従業員に、注意文書を出します」と伝えた。

そしたら、「私たちは、午前8時に来て、一生懸命働き、正午には疲れきってしまうほど、全力を尽くしているのです。私たちの仕事は肉体労働です。とてもキツイ労働だということをわかってほしい」とリーダー格のバーレが言った。

私は、「肉体労働の仕事はいくらでもあるけど、そのほとんどは1日8時間とかしている。1日5時間なんて工場はあまりないのではないか?」

そしたら、「そういう工場はもっと給料が高いですよ」と返してきた。

私は、なんて、説得すべきかわからなくなった。1日5時間という労働時間が『キツイ』というのは、ちょっとありえない。が、「ありえない」と言って、彼らが納得するだろうか。何と比較して説得すればいいのか。うーん。

私は「とにかく、この難民キャンプには、たくさん仕事がなくて困っている人がいます。1日5時間の肉体労働をしても構わないという人がいるわけですから、皆さんにも頑張ってもらいたい」と伝えた。

次に、上司の指示に従うという部分。私は、主任から出されるすべての指示が、真っ当なものという確信がなかったため、「真っ当な指示に関しては、すべて従う」という文面にした。ここで、問題なのは「真っ当な指示」の解釈である。

「どんな、指示は『真っ当』ではないでしょうか?」と尋ねると、「就業時間以外に仕事を振り分ける」と真っ先に返答が来た。

私は「そうですね。それでは、就業時間内に、『レンガの運搬を手伝ってくれ』という指示は真っ当でしょうか?」と尋ねると、「時と場合によります」という、予想通りの返答が来た。彼は「もし、その人が、自分の仕事で忙しかった場合、手伝うのは無理です」と言った。

私は「ここははっきりさせてもらいます。従業員が自分の仕事に『忙しい』か『忙しくない』か、という状態は、主任が判断します。主任の判断によって、レンガを作る人が少なくなり、結果、その日の生産が少なくなっても、それは構いません。どの仕事が優先されるべきか、主任が判断した結果だからです。しかし、もし1従業員が、どの仕事が優先されるか決め始めたら、指示がバラバラになり、組織が組織として成り立たなくなります。つまり、この指示は「真っ当」であり、従わなかった場合は、即、注意文書を渡します。」

従業員たちは黙って私を見ていた。ほとんどが遊牧民かその子供たちだ。「組織」という概念自体、新しいのかもしれない。

仕事を3日間ボイコットした3人には、規則通り、10月分の給料から1割引かせてもらった。彼らは私に何度も「今回だけは見逃してください」と請願してきた。給料を渡したその日の夜、長ーい携帯メッセージが来た。誰かに英語で書いてもらったのだろう。「私は親がいない。頼れる人もいない。だから、今回だけは、どうかお願いします」。

胸が痛かったが、私は心を鬼にした。7月に停職処分を出した2人は、今は見違えるほど一生懸命働いてくれている。今回、しっかり罰則を与えることは、彼らにとっても良いことなのだと、私は自分に言い聞かせた。これが、彼の「組織人」への第一歩になってくれればいいのだが。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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