難民自身が活動を担う重要性

ここ最近は、七厘を配布する前に実地する説明会の質向上に取り組んできた。説明会は、その日に七厘の配布を受ける人を対象で、約1時間かけて七厘の使い方やライフラインの紹介などをする。

「七厘の使い方なんて説明されなくてもわかる」と言う人もいるかもしれない。しかし、相手は、生まれてからずっと、焚き火で料理をしてきた人たち。突然、七厘を渡されて、料理の習慣を変えるのは難しいし、「なぜ、七厘を使うと環境保全につながるのか?」を説明することで、難民たちの環境への意識を高める効果もある。

私が工場に来た頃の説明会はひどいものだった。150人の難民を前に説明し、寝ている者もいれば、連れてきた子供を叱りつけている者もいて、真剣に説明に耳を傾けている者は少なかった。別の工場では、説明会がまともに開催されず七厘が配布され、数日後、彼らの家に行くと、七厘が使われていないことも多かった。

問題の根幹にあったのは、従業員自身が七厘について知識を持ち合わせていなかったため、それを難民に伝えることができなかった。だから、まず、 七厘についての説明書を作り、ソマリア語に訳し、従業員全員に配布した。そして、従業員に研修を施し、クイズ大会などを開き、二つの工場の従業員の知識を競い合わせた。4年働いている従業員が、「七厘が環境保全につながることを初めて知りました!」と感想を話し、逆にこちらが驚かされた。

彼らの中では、七厘は鍋を固定させるのに役立つくらいの認識だった。森林伐採も、日陰の場所が少なくなるから不便とか、家畜の餌が減るくらいの感覚で、酸素と二酸化炭素で動物と植物が相互依存していることも知らなかった。

その後、説明会に何度も立ち合い、

1.参加者を30人以内に抑えること
2.ゆっくり話し、参加者に質問をしながら、理解してもらっていることを確認しながら進行すること
3.実際に七厘で料理をしてみせること
4.説明書を読みながらではなく、参加者の目を見ながら話すこと
5.他の団体が配布する七厘を批判しないこと
6.聞いていない参加者や、遅れてきた人には「七厘をあげません」と厳しく対応すること
7.ライフラインの名前には、受益者の自助努力を促す意味が込められていることを伝えること
9.その一環として、この説明会が開かれ、参加者の能力向上をはかっていることを、しっかり説明すること

などなど、色々、指導していくうち、説明会の質はみるみる上昇していった。私が来た頃は、「説明会なんか早く終わらせて、七厘を頂戴!」と怒鳴っていた参加者が、最近は、治安悪化で、他の団体が活動を制限する中、「こうやって、丁寧に説明会を開いてくれるのは、あなたたちだけだよ」と感謝してくれるようになった。また、「私も、七厘の作り方を学びたい」と言ってくれる20歳の女性参加者もいたりした。

昨年6月、私がライフラインに入った時、ほとんどの難民が2007年から活動している「ライフライン」の存在を知らなかった。治安悪化で、多くの支援活動が自粛され、キャンプ運営を外国人に依存するリスクが露呈。活動のすべてを難民自身でやるライフラインは、普段通り活動を続けている。七厘を配る前に行う実態調査で、ライフラインの従業員が難民の自宅を訪れると「まだ、活動している団体もあるのね!」と驚くという。これを機に、「難民自身でできることは難民で」の大切さを、難民自身がわかってくれたらと願う。
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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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