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パトカーの気持ちもわかる

 従業員の規律が乱れに乱れている工場だが、6月の出勤簿を見ると、遅刻のケースがほとんどない。何か臭う。午前7時半の出勤時間が、本当に守られているのだろうか?私が寝泊まりしているダダーブの国連の寮から、難民キャンプまでの距離は7キロ。治安が芳しくないため、移動の際は必ずパトカーの護送を付ける決まりになっていて、普段の定期護送車は午前8時と10時だ。だから、私自身が午前7時半前までに工場に辿り着くことは不可能で、それは頭の良い従業員もよーく知っている。
 しかーーーし!今年4月からの急激な難民の増加により、定期護送車が午前6時にも出るようになった。これは、おそらく従業員も知らないだろうし、知っていたとしても、朝6時の便で来るほど工場長が仕事熱心だとも思わないだろう。
 私は、新しく主任代理として雇用することになったアデン(仮名、25歳男性)と午前6時半に待ち合わせをし、キャンプの市場で朝ごはんを食べた後、歩いて工場まで行った。アデンは、「午前6時にキャンプに来るNGOスタッフは初めてです。仕事熱心ですね」と言う。
 午前7時15分、工場に行くと、主任のラホがすでに到着していた。出勤簿を付ける主任が遅刻していたら、どんな罰を与えてやろうかと思っていたが、まず一安心。しかし、私の予想通り、7時半までに来た従業員はたったの4人。さすがに8時までにはほぼ全員出勤して来ていたが、9人が「遅刻」マークを出勤簿に付けられた。
 6月は毎日ほぼ全員が時間通りに来ていたのに、私が来た今日に限って9人が遅刻するなんて事がありえるだろうか?主任のラホに「今日に限って変だねえ」と皮肉たっぷりに言うと、「おかしいですね。今日に限って」と少し不安げな表情で彼女は返答した。
 中には「私の住んでいる所はここから遠いのです」「朝ご飯を作るのに時間がかかったのです」なんて言い訳する従業員も。しかし、6月には毎日時間通りに来ていることになっているのだから、そんな言い訳は残念ながら通用しない。私が「でも、これまでは時間通りに来ていたのですよね?なんで今日に限って?」と尋ねると、黙り込んでしまった。主任が少しくらいの遅刻なら大目に見てくれていたとは言えないだろう。
 しかし、正直、私も心中穏やかではない。私が従業員の立場だったら、「そこまでしなくてもいいだろう。嫌な工場長が入ってきたな」と思うだろう。これまでの特権を、一つ一つ失っていくのだから。今朝難民キャンプに行く車の中で思い出したのは、日本で時速40キロ制限の田舎の農道で、隠れてスピード違反者を探すパトカー。数分のうちに1台、また1台と違反チケットを切られていた。その時は、「そこまでしなくてもいいだろー。誰もいない農道を60キロで走ったくらいで」と運転手たちに同情していたが、今はパトカーの気持ちもわかるようになった。
 厳しい工場長と従業員の信頼関係は果たして築かれるのだろうか?アデンの様に、「仕事熱心」と受け止めてくれればいいけど、まあ、それは期待できないだろうな。
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seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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