ソマリアの再建を担うのは誰か?


モウリドの演説後は、私の番だ。

 「皆さんは、3月中旬に能力診断テストを受けました。全体的に成績は良く、皆さんはよく勉強してくれたことに、感謝しています。問題は各工場に4問で、全部で8問あったわけですが、一番、点数が低かった問題は、『ライフラインの活動目的』と『ライフラインのロゴの意味』でした。ここで、この二つの問題の答えとその重要性についてお話させてください。

 皆さんは、『ソマリアはアフリカのライオン』というフレーズを聞いた事がありますか?(皆頷く)70年代、80年代、アフリカ大陸で一番長い海岸を持つソマリアは貿易や海運業で繁栄しました。それが、今では、20年以上、内戦が続く政情不安な国になってしまった。

でも、ソマリアが政情不安になった原因は、ソマリア人自身だけにあるのではなく、恣意的な他国からの介入にもあると思います。欧米諸国や国連の主導で、これまで15以上の国際会議が開かれてきましたが、すべて失敗しています。

皆さんは、もし、これからソマリアが安定するとしたら、それは欧米諸国の人間が担う任務だと思いますか?それとも、ソマリア人自身が担うべき仕事だと思いますか?」

この質問が、ソマリア語に訳されると同時に、従業員たちから「ソマリア人。私たちです!」と大きな声で頷きながら返答があった。

「そうですよね。あなたたち自身が、担わなければならないと、私も思います。私は日本人で、両親、兄弟は日本に、妻はナイロビにいます。私は、これからの人生すべてをソマリアに捧げることはできない。あなたたちから見たら、無責任な傍観者でしかない。そんな私たち傍観者が、ソマリアの再建を担うことになるのだとしたら、それは、また無責任な結果を招く事になりかねない。私がソマリアに持つ関心なんて、あなたたちに比べたらちっぽけなものです。あなたたちは、これからずっと一生、ソマリアと関わっていかなければならないのですから。
 もし、ソマリア人自身が祖国の再建を担うのだとしたら、ダダーブ難民キャンプで、欧米の援助機関が、難民のためにすべてしてあげてしまったら、再建を担える人材は育つのでしょうか?20年間、食料、医療、住居をすべて無料で受け取ることができ、難民キャンプで生まれ育った子供たちは、親がソマリアで培った農作業の知識を持たずに大人になってしまっている。そんな、子供たちがソマリアに帰ったら、どうやって自分たちの生活を再建するのでしょうか?

ライフラインのロゴを見てください。五つの手が、ロープを握っています。このロープは命綱、つまり『ライフライン』です。海で溺れている人を助ける時、船から投げられるロープです。船にいる人がロープを引っ張るのはもちろんですが、溺れている人もロープを引っ張らなければ助からない。つまり、助けられる人の自助努力がなければ、本当の支援はできないという、ライフラインの哲学です。

難民は、ただ、助けられるだけの存在ではない。あなたたちには様々な能力がある。その能力を最大限に引き出したい。日本人とソマリア人が一緒に手を取り合ってやっていく。それによって、将来、ソマリアの再建を担う人材がこの難民キャンプから生まれ、ソマリアが再び『アフリカのライオン』と呼ばれる日が来るのではないでしょうか?

ライフラインの活動目的は、環境保全と、従業員と受益者に自分たちで環境保全を担える技術、知識を伝授することです。皆さん、ライフラインの哲学、わかってもらえましたか?」

従業員たちは深く頷き、拍手をしてくれた。「ソマリアはアフリカのライオン」のフレーズを使ったのは、ライフラインの哲学が、彼らの胸の奥底にある祖国への思いと同調するものだということが、伝わると思ったから。これで、少しは、従魚員たちの仕事への態度もかわってくれたらいいのだけど。
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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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