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遂に改革に着手

 遂に、私がライフラインに入ってから、ずっと着手しようと準備してきた改革が始まろうとしている。工場Aの主任、ラホを代えることだ。

 これまで、何度もラホはこのブログに登場してきては、私と対立してきた。彼女は2007年、ライフライン設立当初から主任として、工場Aを牛耳ってきた。人事権も彼女の手に託され、彼女の親戚や友人らが次々と雇用され、ラホの独裁政権が築かれた。小学校4年で中退したラホに、特に何の研修もしないで、人事権だけを与えてきた、ライフラインの方針にも非があり、ラホだけを責めるわけにはいかない。

 しかし、この10ヶ月、何度も何度も私が指示、監督することが、工場で実地されない。先週、就業時間が終わる1時間前に、すでに仕事を終えて着替え、椅子に座って休んでいる従業員に「なぜ、もう、仕事を終えているのか?」と問いただした。「少し風邪気味なので」という返答で、私が「それはラホから許可は取っているのか?」と尋ねると、「はい」という。ラホに尋ねると、「風邪ということは聞いていたが、休んでもいいという許可は出していない」と曖昧な答えが帰ってきた。

 「就業時間内、従業員がしっかり仕事をするのを監視するのが主任の役目」と就業規則にしっかり明記し、何度も何度も、ラホに伝えてきたにも関わらず、この有様だ。ラホに忠誠心さえ捧げれば、叱責されることはないという、従業員たちの暗黙の了解が、この馴れ合い感を出させているとしか思えなかった。

 昨年12月には、ラホの甥にあたる、ダヒールが、レンガ作りチームから、レンガ組み合わせチームに配置換えされた。ダヒールは「ちょっと手を怪我したので」と私に伝えていたが、作業がより過酷なレンガ作りチームから、主任の甥が配置転換され、その代わりに、ラホとは別の部族に属するイブラヒムがレンガ作りチームに転換され、「不公平だ!」と従業員たちから反発の声が上がった。ラホは、この配置転換について、私に説明することは一度もなかった。

 従業員全員の契約は4月末で切れる。5月1日からは、従業員を新しい配置で始める。問題は、ラホの逆鱗に触れないように、どう、うまくこなすかだ。

 4月2日、モウリドと二人だけでミーティングをした。ラホを代えることに、モウリドも賛成だった。「彼女が主任であり続ける限り、工場内にある不公平感は常に続き、仕事へのやる気を起こさせるのは難しいでしょう」という。

 「ラホが納得いく形で、どうやって配置転換をしようか?君だったら、ラホに何て伝える?」と私はモウリドに尋ねた。

 「『これまでよくやっていただき感謝している。小さい赤ん坊もいることだし、これからは、少し肩の荷を降ろしてもらいたい。そのために、私たちも最前の努力をしたい。給料はこれまでと変わらないが、主任の地位ではなく、アドバイザーとして、七厘の説明会やモニタリングの方に専念してもらいたい』と伝えます。おそらく、給料さえ変わらなければ、彼女は文句を言わないと思います」と答えた。

 彼らしい謙虚な案ではあるが、ラホの権力欲を少し甘くみていないだろうか?2月前半の全面ストライキは、ラホが「工場長は、私を主任の地位から外す理由を探している」と感じ、他の従業員たちに仕事をしないよう重圧をかけたことが引き金だった。昨年9月には、七厘の質を向上させるため、従業員たちが首を長くして待っていた「鉄の枠組」を作れる職人をキャンプ内で探し出した副主任のアダンに「皆に報告する前に、なぜ、主任である私を通さないのか?」と叱責した。彼女の主任職への執着心はものすごい。

 私はモウリドに、「ラホが、『赤ちゃんがいることなんて気になさらないでください。私は子育てと仕事を両立できます』と言ってきたらどうなる?ラホに、このことで話しかけたら、もう後には引けない。彼女が私たちを説得できる余地は残せない」と伝えた。

 私は、「2007年から一度も、主任が代わっていないのだからここで一度、主任の職を公募にかけるというのはどうか?」と尋ねたが、「それは、間接的に、ラホが無能だと言っているようなものです」とモウリドは指摘した。

 うーーん。二人でしばし、色々な可能性を探りながら考え続けた。
私は、ふと、疑問が沸いた。「君がライフラインに入ったのは5ヶ月前だ。君が入った事に、ラホは嫌そうな態度は示した事はあるの?君が、ラホの上司として入り、彼女に対して色々指示を出す事に、面白く思っていないとか?」とモウリドに尋ねた。

 「いえ。ラホは、私が入って、工場長の考えを私がソマリア語で代弁してくれるから、それまでの誤解がいくつも解けたと言っています」とモウリドは言った。

 なるほど。つまり、ラホも私とのコミュニケーションがうまくいっていないことは自覚していた。ラホの英語は日常会話レベルで、少し複雑な会話になると通訳を必要とする。ラホが不得意だった部分を、モウリドがうまくカバーしてくれていたということだ。私は、「これだ!」とひらめいた。

 「ラホにこう伝えるのはどうだろう?2月初旬、工場長と従業員のコミュニケーション不足から、ライフラインでは初めての全面ストライキになった。これにより、ライフラインの本部は、工場長と従業員のコミュニケーション強化策の一つとして、『総主任』という新しい地位を作ることに決めた。総主任は、主任の直属の上司として、工場全体を取り仕切り、工場長とパイプ役をなす。総主任は公募で決められ、もちろん、ラホも応募することができる」

 モウリドは、「それはいいですね!それなら、彼女も納得してくれるかもしれません。彼女の主任の地位は守られるし、公募で選ばれた人が取り仕切り役になれば、工場内に公平感も保たれるでしょう」

 方針は固まった。総主任の公募用紙を作り、明日、ラホにこれを見せる。一体、どんな反応になるのだろうか?果たして改革は成功するのか。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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