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私よりも、従業員の方ができること

七厘の生産が滞ることもしばしばある。現在は、七厘の母体となるレンガを焼く窯の修理のため、従業員は七厘を作る事ができない。そこで私は今月初旬、スピーカーホンを買い、七厘に関する啓発キャンペーン実地を提案した。

4月17日、従業員14人を乗せたワゴンが、昨年できた新しいキャンプの一角に止まると、女性や子供たちが一気に押し寄せて来た。5回目の啓発キャンペーンの日で、私が立ち会うのは初めて。主任のアダンは「これから、環境啓発キャンペーンを始めますので、集まってください」とスピーカーで呼びかけた。辺り一帯に白い国連のテントやビニールシートを被せた住居が敷き詰められている。一瞬で100人ほどの難民が集まった。

「私たちは、ライフラインという団体で、七厘を作っています。七厘を使えば、最低限の薪の量で料理をすることができます。それにより、森林伐採が抑制し、ケニア人と難民の関係も良好になります」などと、集まった人に活動について話した。その後、七厘で実際にお湯を沸かし、お茶を作った。

そして、子供たちによる相撲ゲームをし、 場を盛り上げた後、従業員たちが作成した「ライフライン」の歌を披露した。皆、恥ずかしさから顔をたまに隠しながら、一生懸命、体を左右に振って歌った。

その後も、アダンによる環境についての説明が続き、私は「環境も大事だけど、難民自身でほぼすべてが運営されていることも強調すべき」と提案し、昨年のソマリア飢饉でキャンプに逃れ、ライフラインで働き始めたシュクリを紹介し、彼女がライフラインで働き始めた体験についてインタビューした。

たくさんの同胞の前で、七厘や環境など私が教えた事について、一生懸命にマイクを通して伝えようとする従業員たちの姿には胸を打たれるものがあった。

工場に戻り、「とても素晴らしかった」と私は従業員の努力を労い、早速、従業員に感想を聞いた。

「ライフラインについて知ってもらえて私たちは嬉しかったし、難民の人たちも嬉しそうだった」
「相撲というゲームをやることで、雰囲気が和んだ」
「環境について知ってもらえたのが良かった」

 私は、「それでは、なぜ、こういった啓発活動をやるのか考えてみましょう。」

「ライフラインの事について知ってもらうことです」
「環境や七厘について難民の知識を高めることです」
「難民による森林伐採を抑制し、ケニア人と難民の関係を良好にすることです」

などなど、色々な目的が出てきた。

私は、「それでは、なぜ、ライフラインについて知ってもらう必要があるのでしょう?」

1人の従業員は、「私たちの存在は、あまり知られていないからです」と答えた。

 私は「確かに、私も、ライフラインの名前が知れ渡れば嬉しいです。でも、大事なことは、皆さんが、ライフラインの名前が知れ渡ることで、難民の人たちが、どういった利益を得るのかということを理解することです。ただ、自分たちが有名になりたいだけで啓発をするなら、単なる自己満足で終わってしまう可能性もあります。自分たちが有名になることが、難民キャンプにとって有益であるということを、皆さんが固く信じることができて、初めて啓発活動をすることに意義があるのです」

選挙も全く同じだ。ただ「勝ちたい」と思う候補者の演説と、「自分が勝つ事で社会が良くなる」と思う候補者の演説とでは、伝わり方が全然違う。

そしたら、男性従業員は、「ライフラインが知れ渡れば、七厘や環境についての知識も知れ渡り、生活が改善されます」と言った。

私は、「そうですね。 環境や七厘の件はよくわかりました。他にはありませんか? 」と尋ねたが、返答はなかった。

私は、まだ、従業員たちが、難民キャンプにとって、どれだけ特別な存在になりえるのか、理解していなかったようなので、立ち上がり、ゆっくりと大きな声で説明した。

「ライフラインがこの難民キャンプに提供しているのは、七厘だけではありません。私たちは、『新しい支援のあり方』を社会全体に提言しています。私たちが作っている七厘は、難民キャンプで配布される様々な物資の中で唯一、難民自身によって作られたものです。『難民キャンプ』は『緊急援助』の場と位置づけられ、食料、医療、住居、初等教育などが無料で提供される一方、難民の長期的な人材育成などにはあまり重点が置かれません。20年間、何でも無料でもらえることが当たり前になり、突然、ソマリアに戻って、果たして自分たちで生活再建することはできるのでしょうか?ライフラインは、すべての仕事を難民自身でやることにより、援助慣れが蔓延した難民キャンプに、新しい支援のあり方を提言しているのです。では、それを、啓発キャンペーンでどうやったら伝えることができるでしょうか?」

従業員たちは、「工場がすべて難民で運営されていることを伝え、中には孤児、高齢者、障害者などが含まれ、誰でも七厘の作り方を学びに来れることを伝えます」と返答した。

私は、「皆さんは、私よりも、数倍、難民の人たちに伝える潜在能力があるということを忘れないでください。私がマイクを持って話しても、注意を払う人はいるかもしれませんが、それは、『ああ、アジア人が何か話しているな』ぐらいの感覚でしょう。でも、あなたたちが話すというのは、全く違う重みがあります。それは、あなたたちが、彼らの越境の体験に共感することができるからです。ソマリアで戦争や干ばつで故郷や家畜を失い、ケニアに逃れ、文字の読み書きすらできず、すべてを援助団体に依存した生活だったのが、ライフラインに入って、新しい技術を学び、コミュニティ開発に貢献できるようになった。そういった皆さんの体験話は、難民の人たちの心に響くと思います。私には決してできない芸当です。ダダーブでは、私なんかよりも、皆さんの方が、コミュニティとの信頼関係構築に果たせる役割は大きいということを忘れないでください」

皆、黙って聞き込んでいた。「それはとても、良いアイデアです。私は、ライフラインに入る前は、コミュニティのために何かできるなんて夢にも思わなかった。学校も行った事がない。育てた家畜も失った。ただ、このキャンプですべてに依存して暮らすしかないと思った。でも、今、工場長の話を聞いて、自分にも伝える力があるのだと思いました」と最年長のマリヤン(仮名、40)は話した。

 「とにかく、これは皆さんの啓発活動です。1人1人、自分たちでどうすればうまくいくか考え、話し合って、やってみてください」と伝え、会議を終了した。ライフラインの活動の幅が広がっていくのが、とても嬉しかった。
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まとめteみた.【私よりも、従業員の方ができること】

七厘の生産が滞ることもしばしばある。現在は、七厘の母体となるレンガを焼く窯の修理のため、従業員は七厘を作る事ができない。そこで私は今月初旬、スピーカーホンを買い、七厘に関する啓発キャンペーン実地を提案した。4月17日、従業員14人を乗せたワゴンが、昨年でき?...

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プロフィール

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Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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