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私の指導を従業員が素直に受け取れない理由


副主任に降格させられたアダンが、私のモニタリング指導に対して怒りをぶつけたことが、頭に引っかかり続ける。こちらは、彼らの能力向上のためだけでなく、難民の生活改善を目的に、従業員を指導しているつもりでも、それが、彼らに伝わらないのはなぜだろうか。「工場長に仕事振りを観察されるのは、自分の失態を検索されている気分」とアダンはモウリドに言っていたという。工場を去った元主任のラホも、同じような事を言っていた。

原因は色々考えられる。

1.私の言い方が良くない
2.彼らの活動が「生活改善」へ結びつくという認識がない
3.他人から襲われることはあっても、何かを教わった経験がない
4.援助団体全般や外国人に対して「信頼」がない

まず、私の言い方。私の顔はスペイン人顔負けに堀が深く、目つきが鋭いため、普通に人を見るだけで、その人が睨まれていると勘違いしてしまうことがあるほど。声も自然と大きくなるため、私は普通に話しているつもりが、他人は怒鳴られていると勘違いすることもある。だから、従業員に対しては、できるだけ笑顔で、静かな口調で語りかけることを心がけているつもりでも、気がつくと、モウリドに「口調が感情的になっていますよ」と忠告を受けることがある。

2は、私が工場長になる以前、七厘が環境保全のために作られているということさえ知らない従業員がいた。だから、どれだけ私が一生懸命指導したところで、それが、彼らの生活のためだという認識がなければ、指導をありがたく受け取ることは難しい。

3は、難民特有のもので、祖国で武装組織に襲われたり、ケニアで警察に暴力を受けた経験はあっても、学校は行った事がなく、授業や職業訓練など、新しい知識や技能を家族以外の人間から教わるという経験がない。だから、私が、彼らの改善点を指摘するということは、自分たちに対する攻撃だと自動的に考えてしまう。

 4は、少し意外かもしれない。なぜ、難民を援助する団体に、難民が不信感を抱くのか。昨年2月、私が国連勤務時代に実地した18―35歳の難民1300人の調査では、難民と援助団体の関係について興味深い結果が出た。「援助団体から難民の若者はどう見られていると思うか?」の質問に、教養が高い難民ほど、ネガティブに見られていると考える割合が高かったのだ。本来、教養が高ければ、援助団体などで働き、キャンプ運営に貢献できるのだから、ポジティブに見られると考えるのが自然だ。

 この背景には、ケニア政府の難民政策がある。本来、難民に認定されれば、その国の市民同様、在留許可は勿論、就労の権利などが与えられる。しかし、ケニア政府は、難民キャンプに閉じ込める政策を取り、難民は原則、就労許可は与えられない。それにより、援助団体で働く難民は「ボランティア手当」というお金しか支給されず、ケニア人従業員との賃金の格差はものすごい。同じ学校の先生でも、ケニア人は3万円、難民は7千円といった具合だ。

 つまり、教養が高ければ高いほど、援助団体で働く割合が増える。それにより、難民とケニア人の待遇の差に直面し、難民は「低賃金労働者」として搾取されていると感じることが、調査結果の背景にあると思われる。

 私の従業員も、口を揃えて、ケニア人との賃金格差について不満の声をあげている。だから、私がどんなに頑張って彼らの能力向上に勤めたとしても、彼らは、「結局、どれだけ頑張っても賃金が変わらない」というあきらめムードがあるのだ。

 私が就任当初は、従業員は就業規則も契約書もなく、彼らが労働者としてどんな権利があるのか、知らされることはなかった。だから、彼らの「低賃金労働者として搾取されている」という感はものすごく、ライフラインが真剣に彼らの人材育成に取り組んでいるなんて、微塵も感じていなかったという。

 そんな、複雑な背景がある中、私は、話し合うことでしか、お互いの信頼関係構築の方法はないと思い、4月末の全体ミーティングで、自分が彼らの指導、監督する目的について話す事にした。
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プロフィール

seventh star 7

Author:seventh star 7
黒岩揺光  
1981年、新潟生まれ。7人兄弟の末っ子。15歳で米国留学して以来、住んだ国は計8カ国に。海外生活計17年。日本では毎日新聞記者、アフリカでは難民キャンプの工場長、アゼルバイジャンで主夫、ジュネーブで国連職員などを歴任。現在は中東ヨルダンで妊娠した妻に寄り添う専業主夫。
 著書に「僕は七輪でみんなをハッピーにしたい」(ユーキャン)「国境に宿る魂」(世織書房)。
メール連絡先 yokuroi×hotmail.com (「×」を「@」にしてください) ツイッター:@YokoKuroiwa

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